UX

海辺にて想う、戦いの終わりを SRWNovel

海辺にて想う、戦いの終わりを

海辺から人混みが消える刻になっても、じわりと纏わりつく暑さは変わらない。 「研究所では知らなかった風の流れ、季節……」 うだるほどだがアユルは嬉しそうにワンピースを踊らせる。 連れて来た甲斐があるというものだが、あまりにも無邪気なものだからジンは思わず意地悪を言った。 「それはそうだ。観測史上稀に見る酷暑、アユルどころか地球の誰もこんな暑さは経験したことがない」 「あら!」 しかし無垢な彼女はやはり顔をほころばせてジンの手を取った。 「ということは、私は今スペンサー大尉と同じ驚きを共有出来ているのですね!」 「あ、ああ……そういうことになるな……」 ――――逆にやられた。主にその笑顔に。 「そ[…]
今ここにいる幸運を SRWNovel

今ここにいる幸運を

アーニーがUXに保護された時、正体を隠していた頃のサヤから『らっきーだったナー』と言われたことがある。 命が助かったこと。異星人との連携を強める軍の方針を知ることが出来たこと。 その時は素直にサヤの言葉を受け入れる事ができた。 しかし、世界の在り方を知って疑問が出た。 幸運でも何でもなく、必然だったのではないか、と―― 何度も繰り返した世界。ジンが今のアーニーの位置にいた世界もあっただろう。 むしろこの親友2人はそういう風に仕組まれている。 片方がUXのような部隊に行き、サヤのような存在と出逢い、彼女を目覚めさせる。 この閉じられた世界がそれを脱却するために、蜘蛛の糸のように導かれてきた2人。[…]
枯れない花、されど散る花 SRWNovel

枯れない花、されど散る花

街を割る河に船が浮かぶ。 花火大会があるというので、アルティメット・クロスの面々の一部も純粋に観光に興じている。 「サヤ、行かなくていいのか?」 「リチャード少佐が見ていたドラマで花火大会がどういうものかは知っています」 「だが実物は見たことがないということだろう?」 彼らが戦場で聞くものとは全く違った、火薬の炸裂音。 命を消す爆炎とはまた違った、色彩溢れる『花』と呼ぶに相応しい流れる火。 「会場に行かなくても見られるではありませんか。実物はなお美しいですね」 「出店もあるから行った方が楽しめるだろうが、サヤは人混みは苦手かな?」 「ええ。少尉と……アーニーとはぐれたらと思うと不安です」 素直[…]
輪廻の庭 SRWNovel

輪廻の庭

荒れに荒れた庭に通され、ジンは唖然とした。 「ディラン博士、これは……」 「アユルにこの庭の世話を任せたの。あなたの傷が完治するにはまだ時間がかかるわ。それまで庭の手入れでもしてのんびりなさい」 アユルは俯いて赤面している。 彼女と知り合って間もないが、内気な少女だというのはよくわかる。 ただ、それでも細やかな女性であろうと思っていたので、庭の手入れ1つ出来ないというのは意外だ。 「娘の庭をよろしく、スペンサー大尉」 “娘”と比べて“の庭”の発声が弱かったように聞こえたのは、ジンの男としての性だろうか。 ディラン博士が立ち去り、アユルの赤面がますます強くなった。 「芸術的な庭だな。枯山水か?」[…]
テキストのコピーはできません。