着任祝いに、とサングラスを贈られた。 「君も大尉だからな。これを掛けるのがお約束というものだ」 「どこのお約束なの?あなたが大尉の頃こういうものを掛けていたとか?」 「俺にはこれがあるからな」 己の前髪をかきあげて彼は笑う。少しだけ覗いた右目が表情に不似合いな強い眼光を放っていた。 彼女にはそれが少し恐ろしくもあり、彼にもその感情は伝わっていたようで、髪を元の様に垂らして笑みを強くする。 「これはなかなか便利だよ。視線を隠すことが出来る――余所見をしても平気だ」 「私には見つめていたい人なんていない」 「視線の先は生きている人間には限らないさ」 彼女は応えない。それが答えだ。彼は右目を隠したま[…]