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ホワイトデーの突撃狂 SRWNovel

ホワイトデーの突撃狂

「……やはりこれも失敗か! 忌々しい!!」 ギリアムは彼には珍しく、声を荒げていた。 珍妙なのは声の調子だけではない。 失敗をした、ということ。そして、エプロンをつけていること。 彼はため息をついて、テーブルに無造作に置かれた紙を摘み上げた。 紙にはクッキーの作り方、と書いてある。 彼はオフである今日3月13日に、半日近くずっとこれを見ながらクッキーを焼き続けていた。 エルザム直筆のレシピだけあって、料理については初心者マークのギリアムでも、それなりの物は作れるようになっている。 ただ、彼にとって不幸だったのは、本家のエルザムのクッキーの味を、彼がよく知っているということだった。 プロ級の腕前[…]
“希望”の大地にて SRWNovel

“希望”の大地にて

「ここはこのコロニーで一番大きな公園なんだ」 ヴィレッタは興味なさげに頷く。 実際、興味なんてない。 湖が綺麗だとか緑が豊かだとか言うけれども、結局、それは偽りにすぎないのだから。 「本社から、エルピスでちょっとした仕事をやってくれって」 そう言うとラーダは補給やら整備やらで手が離せないから、とすまなそうに頼んできた。 ヴィレッタとて仮にもマオ社社員。 彼女向きとは言いがたい、量だけは多い雑用の類だが、そういう仕事もしなければならない。 「でもちょっと場所がわかりにくいわね」 「そうね。一応地図はあるけれど…………あら、少佐。珍しいですね。私服なんて」 軽く挨拶をして二人の横を通りすぎた人影。[…]
雨の中で SRWPict

雨の中で

「希望の大地にて」挿絵。 身長差結構あると思うのですがどうなんだろう、と思っていたら後で公式発表されましたね。  […]
こんな日もあるさ SRWNovel

こんな日もあるさ

宇宙へ上がり、エクセレンも無事に取り戻したハガネ及びヒリュウ改の面々。 しばらく敵襲もなく、各員は自機の調子を整えつつ、訓練や趣味に勤しんでいた。 しかしそんな時間さえも混乱に奪われてしまうのは、戦士の宿命だろうか。 平和は、長くは続かない。 悲鳴とも怒号ともつかぬ叫びが、ヒリュウ改であがった。 オペレーターのユンは艦内の異常を手早く報告した。 「艦長、食堂で騒ぎが起きているようです」 「食堂!?」 食堂で騒ぎになるとしたらおかずが多いとか少ないとかの口論だが、今は食事時ではない。 何事だろうか。 ユンが映像を出そうとする間もなく、向こうからコールが入った。 「ど、どうすれば、どうすればいいん[…]
信じたい、だから SRWNovel

信じたい、だから

簡単な、ことだ。 実行するだけなら。 肝心なのは、その一歩を踏み出せるか否か。 踏み出すための、理由。 本当なら、黙っていられないから、で充分。 それで足りないなら、早く行かなければコーヒーが冷める……を付け足そう。 どこかで狂っている思考は、まだ迷いの靄がかかっている。 しかし、迷っている暇なんて、俺にはない。 「ヴィレッタ」 彼女が、振り向いた。 「コーヒーの一杯くらいは飲んでおいた方がいいのではないか?」 オペレーションSRWは現在艦隊戦の最中だった。 格納庫では来るべきフェイズ4に備え、急ピッチの作業が進められていた。 そして我々パイロットは、「急いで休め」と艦内待機を命じられていた。[…]
小隊長様ご無体を SRWNovel

小隊長様ご無体を

直前一週間ほどから、皆が妙に浮き足立つ、この日。 2月14日、バレンタインデー。 友情と愛情とロマンと社交儀礼が渦巻く乙女たちの祭日。 それが及ぼす利益は凄まじく、それを狙った企業の思惑により、 新西暦のこの世界では世界中、いや、宇宙であろうとも彼女たちはプレゼントを抱え奔走する。 そして男は、ある者はそれをひたすら待ちわび、ある者は冷めた目でみつめるのであった。 「わざわざ業界の策略に乗ることはないだろう」 「んもぅ、そんなこと言ってないの。ほらほら!」 そして、ここでももう一人―― 「レオナのプレゼントが貰えますように、レオナのプレゼントがもらえますように……」 タスクはひたすら囁き祈って[…]
Greensleeves SRWNovel

Greensleeves

夜が、更けてきた。 情報の整理は大体片がついたし、BGM代わりの音声データも大した事は入っていない。 そろそろ寝ようか、と思ったところでヴィレッタの思考が止まる。 そして慌てて一つのデータを再生しなおす。 聴き間違いではない。 何度も繰り返した。 「どういうことなの……?」 一緒にする仕事の時、大抵はギリアムが呼び出すのだが、その時呼び出したのはヴィレッタの方だった。 「ごめんなさい、少佐。どうしてもあなたの見解を聞きたくて……」 「構わないさ。それで、何について聞きたいんだ?」 「音声データよ。今、再生するわ」 『お前がイングラム・プリスケン少佐か……』 『……む? この男…………何者だ、貴[…]
若さのヒケツ SRWNovel

若さのヒケツ

「ほら、こんなのもあるぞ」 「これはまた懐かしいものを……」 談話室の隅で元教導隊の4人が何やらやっている。笑いあって、何かやたらと楽しそうだ。 「何やってるんですか、少佐たち?」 「おう、何、教導隊時代の写真をな」 談話室の他のメンバーも興味を持って集まってくる。 手から手に回される一枚の写真。揃いの軍服で肩を組んでいる6人組。中央の男性以外は皆見覚えがあった。 「わお、カイ少佐もボスもわっか~い!!」 「こうして見るとやっぱりライに似てるよなぁ」 「この人がカーウァイ大佐ですか?」 「なるほど……流石写真からでも何か風格が感じられるなぁ」 艦内は娯楽が少ない故であろうか。 どこから聞きつけ[…]
指揮官Lv0 SRWNovel

指揮官Lv0

「戦闘指揮官……ですか?」 「はい」 ブリッジに呼び出され出向いてみれば、パイロット総出でお出迎え。 そして戦闘指揮官への任命、である。 「元々当艦ではゼンガー少佐が務めていたのですが……」 「アサルト1はキョウスケが引き継いだんですけど、指揮官はそうもいかないでしょう?」 「自分は情報部からの出向なのですが……」 あまりにもお粗末過ぎる言い逃れ。 これで任を逃れられるとはギリアム本人も欠片たりとも思っていない。 「本来そうでも今はパイロットとして出向していただいておりますからなぁ」 「いつも先頭に立つのに何言ってんだか」 「教導隊の人っすよねぇ」 「階級、実績、共に問題ないわ」 「少佐なら大[…]
「お互い様」だから SRWNovel

「お互い様」だから

ようやく、長い戦いが終わった。 機体が運び出され、静まりかえったヒリュウ改の格納庫。 ギリアムとヴィレッタの二人を除いては誰もいない。 話すことは色々あった。 この戦争のこと。イングラムのこと――これからのこと。 「それから……あなたにお礼を言わせて」 「礼?」 「そうよ……」 言葉の内容より、その響きに疑問を持って問う。 意外なほどに、優しかったから。 ヴィレッタがささやく。 「あなたは、私を信じてくれたから」 ヴィレッタの微笑がすぐそこにある。 どういうわけだか、そうしなければいけない気がして。 視線を少しだけ外した後、ギリアムも微笑する。 「……それはお互い様、さ」 ネビーイーム。地球側[…]
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