小説

長き夜を越え、花園で待つ SRWNovel

長き夜を越え、花園で待つ

SRXチームの詰め所に春の花が届いた。 贈り主はギリアム・イェーガー少佐。 女性陣宛て、花籠3つ、それぞれへのメッセージカード。 「花言葉も選んでありますね、これ」 アヤが目を丸くしている。 「隊長には普通に愛の花を取り詰めてるのに、私とマイには親愛だとか希望なのが……」 「隊長の分だけ花が多いな。羨ましいぞ」 公然の仲なのに何のアリバイ作りだろうか、と疑問になってしまうが。 「ギリアム少佐ってプレイボーイだよなぁ。絶対机の上にチョコ山積みにしてるしホワイトデーの予算組んでる」 理解していない約一名の反応を見るに極度の鈍感または鋼龍戦隊外には通用しそうなカモフラージュである。 ――少し、恨めし[…]
トリックツアー・スターライト NinNovel

トリックツアー・スターライト

「ハロウィン!? オバケはやだよ!」 ルイージが尻込みするが、それ以外の満場一致で今回のツアーはハロウィンがテーマに決まった。 「誰かプロデュースしたい人はいるかい?」 「ママ! ママがいい!」 マリオがいつもどおりに議事進行係を務めるとチコが飛び出した。 「あら、いいわね。ミステリアスビューティー、ロゼッタの本領発揮!」 「み、みすてりあすびゅーてぃー?」 ピーチが頷くと皆の視線がロゼッタに注がれ、困惑する。 「ママ、お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ!」 「後でコンペイトウをあげるわ……皆様がそう仰るなら、謹んでその役割を承ります」 ツアーのプロデュースと言ってもやることは誰に各カップを[…]
大空の勇者、穏やかな海辺に立つ SRWNovel

大空の勇者、穏やかな海辺に立つ

  雷を操る大空の勇者、グレートマジンガー。 ただ今日の海はとても穏やかで、潮風の爽やかさに揺れるジュンの髪の柔らかさや褐色の素足を波に晒し喜ぶ姿は、平穏だが少し衝動のやり場に困る。 鉄也は少しばかり襲来警報を期待した己を恨んだ。戦闘マシンでなくなったのは他でもない彼女のおかげだ。 「キャッ、何するの!」 誤魔化そうと腕で掬った海水をザバリとジュンに掛けると少し怒った。 「ハッ、結構子供らしいと思ってな」 「そういうことをする鉄也の方が子供じゃない!」 カラカラと笑うと激情を示し迫っている――結局ジュンも気性が荒い炎の女なので直接戦闘は危険だ。 「悔しいならやりかえしてみろ」 離脱し[…]
メイシスのアーガマ潜入記 SRWNovel

メイシスのアーガマ潜入記

私の名はメイシス。 我が敬愛する閃光の将軍、アルティス様のためにかの方の不肖の弟であるフォルカが身を寄せるアーガマという戦艦に潜入している。 侵入はあっけないほどに簡単だった。 この世界はどういうわけだか機体の整備にそれ専用の人間を必要とするらしい。 しかもその数が無駄に多い。おまけに入れ替わりが激しいときている。 私は補給の時に作業着を入手し紛れ込むだけでよかった。 これなら艦内で動いていても怪しまれない。我ながら完璧な策略。 こちらの世界に来てから通信機の調子が悪く顔ははっきりとは見えていないはずだしな。 フォルカにさえ見つからなければわからんはずだ。 私は任務を遂行しつつ艦にうまく溶け込[…]
狂科学者監督伝説 Others

狂科学者監督伝説

ここにある村は、ひとつの事で苦しんでいた。 彼らは待ち望んでいた。 この状況を打破してくれる、救世主の存在を。 彼らにとって不幸だったのが、通りがかったのが困っている人を見過ごせぬ風来人ではなく、 破天荒で自己中心的な自称エレキ箱芸術家、バリバリだったことである。 双方がまだ理解していなかった。 村人は彼を救世主と思い総出で歓待したし、バリバリの方は自分の芸術を理解する人間が貢物をしてくれたのだと、完全に勘違いしていた。 「それで我輩はこのネコボーと共に旅に出たのだ! 一世一代のエレキ箱を完成させるために! 我輩の芸術を世界に広めるために! ハハハハハハハハハハ!!」 バリバリは、酔っていた。[…]
気付いてしまったこと Others

気付いてしまったこと

竜の砂時計が完成し、ユーディーが元の世界に帰る方法も確立された今、 彼女がこの世界でやるべきことは、世話になった皆に別れを告げ、依頼を全て片付けることだけだった。 しかし依頼を片付けるには少し材料が足りない。 採掘場に向かおうとすると、酒場にいたヴィトスが彼女に同行してきた。 「あんたも物好きね、ヴィトス。もう借金は返したんだからついてこなくてもいいのに」 「僕が君とつるんでいるって事は一応知られているからね。最後の最後におかしな事になっては、僕の信用に関わる」 「いっつもそうよね、ヴィトスって……」 ユーディーは呆れというより哀しみの声で呟いた。 ――――結局、ヴィトスにはお金が全てなのだ。[…]
向かい風の中で Others

向かい風の中で

誘うだけ誘ったあとは、向かい風ばかり寄せてくる旅の神クロン。 早くこの村を出て行かなくてはならない。 その想いは焦燥を生むだけで、力に変わりはしない。 進むことも、戻ることも出来ない。 心は、荒んでいく。 「ちょっと気晴らしした方がいいンじゃねぇか、シレン?」 「煩いな、そんな暇ないよ……」 「その調子じゃダメに決まってらぁ。オイラの言うこと聞いてりゃ間違いはねぇって」 「何だよ、口だけ達者で、俺にばかり苦労させて……一人じゃなーんにもできねぇくせによ」 日常茶飯事である二人の口論も、どこか刺々しい。 結局はシレンが折れ、“気晴らし”をすることになった。 それを知ってげんなりしたのは、ヨシゾウ[…]
信じたい、だから SRWNovel

信じたい、だから

簡単な、ことだ。 実行するだけなら。 肝心なのは、その一歩を踏み出せるか否か。 踏み出すための、理由。 本当なら、黙っていられないから、で充分。 それで足りないなら、早く行かなければコーヒーが冷める……を付け足そう。 どこかで狂っている思考は、まだ迷いの靄がかかっている。 しかし、迷っている暇なんて、俺にはない。 「ヴィレッタ」 彼女が、振り向いた。 「コーヒーの一杯くらいは飲んでおいた方がいいのではないか?」 オペレーションSRWは現在艦隊戦の最中だった。 格納庫では来るべきフェイズ4に備え、急ピッチの作業が進められていた。 そして我々パイロットは、「急いで休め」と艦内待機を命じられていた。[…]
すれ違う願い SRWNovel

すれ違う願い

「フェルナンドを救ってやってくれ……」 「で、でもどうすれば!?」 昔と同じように真剣な眼差しでフォルカが聞いてくる。 しかし昔とは違う。何もかもが。 「……お前の心のおもむくままに」 そう、フォルカは強くなった。 最早自分が導いてやる必要はない。 静かに目を閉じた。 最善を尽くしたとは言えない。心残りもある。 だが、きっとこれで良かったのだ。 これでいい……これで。 笑みがこぼれた。 記憶だけが瞼の裏を通り過ぎていく。 「フォルカ、私の弟よ……またあの頃のように、暮らし、たかった…………」 結局……この望みは叶えられなかったけれども。 「……誓ったんです。望みを叶えるために」 ――誰、の声だ[…]
信頼と献身の方程式 SRWNovel

信頼と献身の方程式

「號、いるかなぁ……」 自分の部屋にいないとすれば、まずはここ、格納庫――予想通り。 しかしなんでまた、ブラックゲッターの上につっ立っているのか。 ――――何とかと煙は高いところが好きって言うケド。 「ゴーウー!!」 仰ぎながら大声で叫ぶ。 影が動き、渓は続ける。 「アンタそんなトコいないでちょっと降りてきなさいよー! これで話すの、疲れるンだからー!!」 やれやれ、だ。 戦闘中なら勢いでいけるが、普通の時にこう上を向いて叫ぶのはなかなかにキツい。 おまけに。 「……アンタねぇ……そりゃあたしは降りてこいって言ったケドさぁ……」 目の前で、號がきょとんとしている。 「何で! アンタ飛び降りんの[…]
小隊長様ご無体を SRWNovel

小隊長様ご無体を

直前一週間ほどから、皆が妙に浮き足立つ、この日。 2月14日、バレンタインデー。 友情と愛情とロマンと社交儀礼が渦巻く乙女たちの祭日。 それが及ぼす利益は凄まじく、それを狙った企業の思惑により、 新西暦のこの世界では世界中、いや、宇宙であろうとも彼女たちはプレゼントを抱え奔走する。 そして男は、ある者はそれをひたすら待ちわび、ある者は冷めた目でみつめるのであった。 「わざわざ業界の策略に乗ることはないだろう」 「んもぅ、そんなこと言ってないの。ほらほら!」 そして、ここでももう一人―― 「レオナのプレゼントが貰えますように、レオナのプレゼントがもらえますように……」 タスクはひたすら囁き祈って[…]
Greensleeves SRWNovel

Greensleeves

夜が、更けてきた。 情報の整理は大体片がついたし、BGM代わりの音声データも大した事は入っていない。 そろそろ寝ようか、と思ったところでヴィレッタの思考が止まる。 そして慌てて一つのデータを再生しなおす。 聴き間違いではない。 何度も繰り返した。 「どういうことなの……?」 一緒にする仕事の時、大抵はギリアムが呼び出すのだが、その時呼び出したのはヴィレッタの方だった。 「ごめんなさい、少佐。どうしてもあなたの見解を聞きたくて……」 「構わないさ。それで、何について聞きたいんだ?」 「音声データよ。今、再生するわ」 『お前がイングラム・プリスケン少佐か……』 『……む? この男…………何者だ、貴[…]
若さのヒケツ SRWNovel

若さのヒケツ

「ほら、こんなのもあるぞ」 「これはまた懐かしいものを……」 談話室の隅で元教導隊の4人が何やらやっている。笑いあって、何かやたらと楽しそうだ。 「何やってるんですか、少佐たち?」 「おう、何、教導隊時代の写真をな」 談話室の他のメンバーも興味を持って集まってくる。 手から手に回される一枚の写真。揃いの軍服で肩を組んでいる6人組。中央の男性以外は皆見覚えがあった。 「わお、カイ少佐もボスもわっか~い!!」 「こうして見るとやっぱりライに似てるよなぁ」 「この人がカーウァイ大佐ですか?」 「なるほど……流石写真からでも何か風格が感じられるなぁ」 艦内は娯楽が少ない故であろうか。 どこから聞きつけ[…]
指揮官Lv0 SRWNovel

指揮官Lv0

「戦闘指揮官……ですか?」 「はい」 ブリッジに呼び出され出向いてみれば、パイロット総出でお出迎え。 そして戦闘指揮官への任命、である。 「元々当艦ではゼンガー少佐が務めていたのですが……」 「アサルト1はキョウスケが引き継いだんですけど、指揮官はそうもいかないでしょう?」 「自分は情報部からの出向なのですが……」 あまりにもお粗末過ぎる言い逃れ。 これで任を逃れられるとはギリアム本人も欠片たりとも思っていない。 「本来そうでも今はパイロットとして出向していただいておりますからなぁ」 「いつも先頭に立つのに何言ってんだか」 「教導隊の人っすよねぇ」 「階級、実績、共に問題ないわ」 「少佐なら大[…]
月の想い人 Others

月の想い人

「……ごめん、また戻されちゃった」 身を起こして、寝癖を適当に直して。 シレンさんは、すまなそうに笑う。 「ホンット情けねぇよなぁ、コイツ」 「るせぇ。そりゃ確かに今回は俺がしくじったせいだけど」 ふてくされるシレンさん、子供みたい。 かと思ったら、いきなりコッパちゃんにつかみかかった。 「けどなぁ、いっつも袋ん中で寝てやがるてめぇにだきゃ言われたくねぇ!」 「八つ当たりすんじゃねぇよこの馬鹿!!」 しばらく罵りあっていた二人が急にこちらを向いてきょとんとする。 私が、笑い出したから。 いつものことなんだけど、本気でやりあう二人がちょっと滑稽で可笑しくて……ついつい笑っちゃうの。 「ほれ見ろ、[…]
「お互い様」だから SRWNovel

「お互い様」だから

ようやく、長い戦いが終わった。 機体が運び出され、静まりかえったヒリュウ改の格納庫。 ギリアムとヴィレッタの二人を除いては誰もいない。 話すことは色々あった。 この戦争のこと。イングラムのこと――これからのこと。 「それから……あなたにお礼を言わせて」 「礼?」 「そうよ……」 言葉の内容より、その響きに疑問を持って問う。 意外なほどに、優しかったから。 ヴィレッタがささやく。 「あなたは、私を信じてくれたから」 ヴィレッタの微笑がすぐそこにある。 どういうわけだか、そうしなければいけない気がして。 視線を少しだけ外した後、ギリアムも微笑する。 「……それはお互い様、さ」 ネビーイーム。地球側[…]
多重の幻影 SRWNovel

多重の幻影

「何しろ手加減などしたことがありませんから……うっかり、加減を間違えるかもしれませんが、宜しいですね、陛下?」 ゼウスのメンバーはネオ・アクシズの喉下まで迫ってきている。 このままではプロジェクト・オリュンポスに支障が出るのは明白だ。 部下には任せて置けぬ、と幹部であるシロッコが自ら出撃する旨を伝えた。 アポロンは仮面の奥でこの男を鋭く見ていた。 ゼウスのメンバーを決して殺すな、とアポロンは部下に命じている。 部下たちは、洗脳するか改造するかだろう、と各々自分なりの理由をつけてそれをしようと尽力していた。 しかし、アポロンがそれを命じた理由を知れば、誰もそれに従おうとはしないに違いない。 そう[…]
闇の戦士たち Others

闇の戦士たち

このフロアの敵はだいたい片付けたようだ。 テムは息をつき傍の石に腰掛けた。 「ふう……」 気が浮かなかった。むしろ段々滅入ってくる。 フリージアの街から少し行った所にあるダイヤモンド鉱山。 表面は綺麗なあの街も、裏通りは奴隷商人の巣窟……というのも気が滅入る事実だったが、 実際に奴隷が働かされている現場であるここはそれ以上にひどい。 人間が魔物に使役される、そんな所があるなんて、思いもしなかった。 前にも旅に出たことがあるが、その時は父や頼れる大人たちがいた。 それに、戦う必要はなかったのだ。 今は同い年の仲間と旅をしているが……戦いの場ではテムは一人だった。 もっとも、一人、というのは少し違[…]
テキストのコピーはできません。