月を、眺めていた。 神楽天原の『温泉』は疲れを癒してくれる上に月見酒、花見酒と洒落込めるので人気があるそうだ。 それを貸しきり出来る幸運に感謝する。 輝きながら彼女の宿命を嘲笑うようで憎らしくすら感じることもあったエンドレス・フロンティアの月だが、今はただその輝きすら愛おしい。 桜の花もだ。神楽天原の花は常に咲き常に散っていく。その儚さを神楽天原の者は愛でるという。だがその儚さを彼女の運命と重ね合わせてしまった。 今は、花を愛でる彼女を愛し、故に花も美しく思う。 「ハーケンさん、お背中流しましょうか?」 「おおっといけないな、プリンセス。旅のバウンティ・ハンターの俺をプリンセスがもてなすなんて[…]