ギリヴィレ

Bitter treat Black trick SRWNovel

Bitter treat Black trick

ギリアム・イェーガーに関する、数多くの噂のひとつ。 『バレンタインデーのお返しがとても充実している』 非常に現金、かつ彼に関する噂の中では確実な裏が取れている珍しいもの。 ――――――名前付きのメッセージカードに、贈ったものの意図に対する細やかな返事と、地球圏各地の珍しいものや高級なものが、贈ったものの約3倍の価値で返ってくる。 手作りは受け取らないので、逆に投資しやすいという注意事項兼要項まで流れている。 元より特殊戦技教導隊として数多くの伝説を残す、少し――だいぶ変わったエリートパイロットであり、鋼龍戦隊としての戦績もある。 年齢、20代後半。『人間離れした』という修飾語のつく顔立ちの整い[…]
取り零した約束に SRWNovel

取り零した約束に

朝と夕の祈りは欠かすことがない。 「今日は招待されて映画を見に行ったのさ。ひいおじいさまはこんなカッコいい人じゃなかった、などと言っていた少女……ナンブ、といったかな。どうにも悪癖の方が伝わっているようだ」 一辺の曇りもないよう磨き、花を捧げて、答えのない会話を投げる。ルーティンでありながら常に違う動き。 「君と行けたら良かった」 彼と同様招待され変わらぬ姿のラミアと久しぶりに会い、少しおかしな丁寧語の彼女としばらく話すと、あなたは変わったと憐れみ呟いた。 「変わるはずがない俺に、何でラミアはあんなことを言ったのだろうな」 隠した愛機に改修を繰り返し、闇を払い護るべきものを護る。揺らぐはずのな[…]
いつの未来も、きっと幸せな SRWNovel

いつの未来も、きっと幸せな

データルームの入口にはずっと在室を示す掲示灯が光っている。ドアベルのボタンを押して、室内との通信が開くのを待った。 「ギリアム少佐、入ってもいいかしら。何か手伝えたらと思って」 《君か、ヴィレッタ。歓迎する》 電子ロックの解錠と共にプシュッと空気音がして彼女を招いた。彼女が腕から下げたのは給餌用の保温バスケット。会釈するとポットを手に微笑んだ。 「そろそろコーヒーのおかわりも欲しい頃合でしょうしね。詰め過ぎよ? それと軽食も」 バスケットを置くとサンドイッチが入っているのがわかる。トーストと少し溶けたチーズの薫香と共に瑞々しい野菜の色が本能を刺激した。 「これは君が?」 「あら、よくわかったわ[…]
エンキョリレンアイ SRWNovel

エンキョリレンアイ

ようやく1人になれる時間が出来てDコンを取り出して、ふと我に返った。 連絡を取ろうとした相手はヴィレッタだが、鋼龍戦隊の置かれた状況が思わしくないことは他でもなく先程までしていたGS絡みの任務その他で嫌というほど知っている。 仕事やそれを振ってくる上層部への愚痴というのは俺たちの日常会話としてはよくあることだが、久方振りの連絡でそれはどうかという良識があった。 ヴィレッタもそこでアーマラ・バートンという敵対存在に心を乱されている。 話題が必要だ。気を紛らわすような面白みのある話で彼女が知らないようなもの。 ――――無理だな。楽しい人間に混じるのは好きだが、正直ネタ切れだ。 全体の心身のケアと自[…]
ぬいぐるみの少女がいる世界 SRWNovel

ぬいぐるみの少女がいる世界

初夏の風と心地良い陽気に誘われて、街に出た。積もった仕事が片付いた慰労も当然ながら含まれる。 「あ…………」 公園に差し掛かった時、ギリアムが嘆息と共に目を丸くした。視線の先には幼稚園児ほどの少女がいて、くまのぬいぐるみとままごとをしている。少し距離を置いて見守る両親らしき若い男女は幸福感に溢れており、釣られて視線を移したヴィレッタも思わず微笑んだ。 「……ギリアム?」 しかし長くは続かない。この日常に似合わぬ動揺が伝わり、そもそも彼が取り乱すという異常事態がヴィレッタを強張らせる。 「ああ、いや、何でもない。君とああいう夫婦になれたら、と思っただけさ」 急ごしらえであることが露骨な口説き文句[…]
隊長業と甘い罠 SRWNovel

隊長業と甘い罠

モニターに向かう。数値の羅列、3人のT-LINKシステムのグラフ、隊員たちの所感、演習の成績、その他諸々。 今日のテストは大規模で、SRX計画の完成形、コードネーム『アルタード』のため改良されたT-LINKシステムと連携する新型エンジンを搭載した特殊なゲシュテルベンでの演習だった。 機体に搭乗していたとはいえ監督だったヴィレッタは隊員たちを労ってゆっくり休むように声をかけ、報告書と戦っていた。 0時を回ったのを確認し、少し目眩がした。ここのところアルタードの件に追われロクに休めていない。 人造人間といっても生理反応は人間とほぼ変わりなく、睡眠不足は集中力と体力に響く。 その時執務室の入口のコー[…]
朝へと続く光 SRWNovel

朝へと続く光

「大丈夫か? 震えている」 ギリアムのコートを掛けられた。防弾仕様で武器があちこちに仕込んであるせいか重く、そして彼の温もりを感じる。 彼の右手に座ったおかげで、その瞳を見ないで済む。きっと心配で揺らめいているのだろうけど、目が合わせられなかった。 先の出撃が終わって、格納庫で会った彼はこの展望室に私を連れてきた。気遣いが痛い。私は――――ただの人形なのに。 「!!」 己の思考に入り混じった囁きに身が強張った。まだ、残っている。ゴラー・ゴレムとの戦闘で揺るがされた自我の歪みが。 「……ねえ、ギリアム」 「断る」 予知能力ゆえか、状況からの判断か、彼は私の懇願を言葉になる前に断じた。 「有り得な[…]
長き夜を越え、花園で待つ SRWNovel

長き夜を越え、花園で待つ

SRXチームの詰め所に春の花が届いた。 贈り主はギリアム・イェーガー少佐。 女性陣宛て、花籠3つ、それぞれへのメッセージカード。 「花言葉も選んでありますね、これ」 アヤが目を丸くしている。 「隊長には普通に愛の花を取り詰めてるのに、私とマイには親愛だとか希望なのが……」 「隊長の分だけ花が多いな。羨ましいぞ」 公然の仲なのに何のアリバイ作りだろうか、と疑問になってしまうが。 「ギリアム少佐ってプレイボーイだよなぁ。絶対机の上にチョコ山積みにしてるしホワイトデーの予算組んでる」 理解していない約一名の反応を見るに極度の鈍感または鋼龍戦隊外には通用しそうなカモフラージュである。 ――少し、恨めし[…]
MyHERO SRWNovel

MyHERO

その施設をヴィレッタが訪れていたのは、不幸な偶然と言う他ない。 バーニングPTによるパイロットの民間からの選抜事業は細々と続いていた。 イングラムの後任としてその監修も引き継いだだけのこと。 思いもしなかったのだ。 派閥抗争に敗れた軍の一部が自棄を起こし武力行使で施設を占拠し復讐を試みるなどと。 「あなたたち、こんなことをして何になるの? 軍が本気を出せば簡単に鎮圧されてしまうわ」 「うるさい! こっちには民間人の人質がいるんだ! 実力行使に出て人質死亡なんてなったら後味が悪いし世論が許さないだろうよ!」 確かに。この施設は一般的には民間施設とされているし実務にあたっているスタッフも殆どは事情[…]
もしも願いが叶うなら SRWNovel

もしも願いが叶うなら

今日は流星群の日だという。 天気の予測は晴れ、月もなく絶好の観測日和。 アイビスのテンションが高い。彼女の異名が“銀の流星”だからだろう。 「流星は夜を切り裂いて飛んでいるんだよ!」 季節外れの笹を持ち皆に短冊を配る。 笹には『スイーツ食べ放題!』と書かれた短冊が既にぶら下がっていた。 「折角だから皆で願い事、しよっ!」 『プレミアム超合金完全変形合体バーンブレイド!!』とリュウセイが書いていた。 「それは前発売されてなかったか? 軍の給料は安くはない。無駄遣いしていなければ買えるはずだ」 ライが呆れ顔で『チーム内円満』と書かれた短冊を抱えている。 「リュウも私も無駄遣いはしていない! ただネ[…]
何度でも呼ぶ、君の名を SRWNovel

何度でも呼ぶ、君の名を

薄く目を開く。弱々しい人工光。 周囲を見渡して、彼は実験の失敗を認識した。 ここがどこかはわからないが、天にも大地があることから、少なくとも彼の目的地でないのは確かだった。 それを告げるが如く、サイレンと臨時の公共放送が流れ始めた。 『コロニー・エルピス市民の皆様、周辺宙域で地球連邦軍と統合宇宙軍の戦闘が始まりました。至急シェルターへの避難を。繰り返します……』 避難勧告の中、彼は動けずにいた。足も、思考も、動作を拒否している。 彼はほぼ全てを失ったが、残った予知能力は戦いがここから始まることを告げていた。 その時、誰かに名を呼ばれた気がした。 遥か昔に失った、そして今取り戻した名を。 ***[…]
愛の絆 SRWNovel

愛の絆

艦内にはいつも新しい花が飾られている。 ――――麗しい花たちを飾る別の花も必要なものですよ。 そう言ってショーン副長が消耗品の予算から割いているという噂がまことしやかに流れているが、その真偽は彼女たちにはわからなかった。 ただ、どの花を飾ろうかと話の花を咲かせるのも、楽しみのひとつではあった。 「アヤ、青い薔薇はないのか?」 「昔と違って今は結構出回っているけれど、ここにはないみたいね」 今日の担当はSRXチームの3人。 早々に職務を放棄したヴィレッタと知識全般が欠けているマイを見て人選ミスを疑ったアヤである。 「そうか。戦って死んだ敵には青い薔薇を手向けるものだというから」 「どこで聞いたの[…]
戦う理由 SRWNovel

戦う理由

「君にも君の仕事があるだろう? 俺は、大丈夫だから」 ギリアムの言葉で我に返った。 彼の準備を手伝っていたが元々荷物は少なくやることは少ない。 つい考え事をしてしまっていた。 鞄を受け取ろうと手を伸ばしている。 ため息のような微笑。 渡せばしばらく彼には会えなくなる。 ――――大丈夫なんてそれほど便利な言葉じゃないのよ。 視線を微かに逸らせながら鞄を手渡した。 青の亡霊が視界に入る。 この機体を受け取った時は嬉しかった。 彼女のために調達してくれたこの機体は彼にとって特別な意味を持つもののはずだから。 知識や腕が求められているだけでもよかった。 何でもいいから少しでも多くのことを為したかった。[…]
政の方が得意そうな2人 SRWNovel

政の方が得意そうな2人

盆暮れ問わず仕事があるのが、軍隊というもの。 しかし今年は平和で、基地博ではアルトアイゼン・リーゼの展示が人気スポットとなり、兵士たちはオフに近隣の祭りを楽しむことが許されている。 「それで何故君が引率に? SRXチームの彼らも子供ではないだろうに」 夜空を彩った男性用の浴衣を着用したギリアムは、わたあめを味わいヴィレッタに問いかける。 長い髪も後ろで結っており、軍人らしさが感じられない。 それが彼の情報部としての偽装術なのかもしれないが。 「あなたは何故だと思う? 推理力に期待するわ」 一方のヴィレッタは橙色の浴衣を提灯に光らせ笑う。 思案する。わたあめを少しずつ口にしながら。 「まず、その[…]
今度こそ、彼を SRWNovel

今度こそ、彼を

“向こう側”に残してきたリュケイオスが何らかの影響で変異を遂げ、こちら側に現れた。 ギリアムですらも把握していないその存在は、何故かギリアムのよく知るXNガイストの姿をしていた。 「だが、俺なら制御出来るはずなんだ」 無差別に攻撃を繰り返すそれを相手に、彼は何らかの決意を決めたようだった。 「奴の動きを止めてくれ。その間に俺がコアユニットとして入り込む」 皆、危険だと制止した。それしか手段はないのか、むしろそれは手段には成り得ないのではないか。 「ヴィレッタ……君は俺を信じてくれるよな?」 「信じている。でも、貴方にそれをさせる訳にはいかない」 ギリアムは軽薄に笑う。 彼には珍しく、そして彼ら[…]
その愛は幻影か SRWNovel

その愛は幻影か

状況を理解するのに、しばらく時間が掛かった。 近くには彼女の仲間はおらず、センサー類は現在地を感知できない。 ただ、R-GUNは呼び出す事が出来るし、不自然な程に無傷だ。 意識を失う前は、機体の損傷も弾薬の消耗もあったはずだが、それが全く無くなっている。 有機的にも無機質にも見える壁に囲まれた空間はどこか禍々しさ、そして何故か迷いを感じた。 しかしこの空間には扉というものが見当たらず、強いていうなら六芒星を描いた魔法陣があるくらい。 意を決して、R-GUNに乗ったまま魔法陣に踏み入れる。 似たような空間だったが、広く、そして人がいるという相違点があった。 「よく来たな……ヴィレッタ・プリスケン[…]
昼下がりのワーカホリック SRWNovel

昼下がりのワーカホリック

何もない、というのも困ったものだ。 軍人、特に彼――ギリアム・イェーガーにまわる仕事がないというのは平和の証であり、素晴らしいことではある。 部下である光次郎が昼食を要求してくれたのなら、今なら仕方のない奴だと連れて行くのに、粛々と雑務をこなしている。 普段からこの勤勉さを見せてくれればもっとありがたいのに、と手伝う旨を言えばたまには休んでいいですよとあまりありがたくない答えが来る始末で頭を抱えたくもなる。 ワーカーホリックというのはこういうものを言うのだろう。 彼の予知能力はしばらくの平和を告げており、これではシャドウミラーと同じだと己を戒めるも状況が改善されるはずもない。 「ギリアム少佐、[…]
恋人のいない夜 SRWNovel

恋人のいない夜

プレゼントは前日までに用意しておいた。 レオナやカーラに混じってレーツェルの講義を受けてまで手作りをする気にはなれなかった。 レーツェルはやたら世話焼きだからギリアム少佐の好きなお菓子のレシピを手ほどきしてくれるだろう。 だが、それでは駄目なのだ。 レーツェルに教わる限り、手作りに拘る限り、彼の料理を超えるのは不可能だ。 無論少佐なら「君が作ってくれたのが一番さ」と笑うだろう。 その笑顔を誰にでも振りまいているであろうことが、とても寂しい。 少し苦いチョコレートに、ネクタイを添えた。 それで彼を拘束出来る、なんておまじないをしなかった訳でもないけれども。 彼(と情報部の面々)がいつもいる小会議[…]
『愛』を覚えるには未熟 SRWNovel

『愛』を覚えるには未熟

『俺は、闘う事しかできない不器用な男だ。だから、こんな風にしかいえない。俺は、お前が、お前が、お前が好きだっ!! お前が欲しいっ!!』 流麗な字で書かれたその文章を見て、ヴィレッタは己の好奇心を悔いた。 何故ギリアムが真顔で書いていた手帳に流派東方不敗の継承者の告白が記されているのか。 無論好奇心だけでなく彼に関する情報が手に入れば、と思っていたのだが。 万が一見られても大丈夫なようにか、その手帳には食事のメニューだとか――今日の昼食は日替りA定食だったらしい――あたりさわりのないことしか書かれていなかった。 昨日の謎の文章は『ダイヤモンドより君だ』だった。 『好きになっちゃったんだからあった[…]
『幸運』持ちではないけど『幸せ』ではある2人 SRWNovel

『幸運』持ちではないけど『幸せ』ではある2人

着任祝いに、とサングラスを贈られた。 「君も大尉だからな。これを掛けるのがお約束というものだ」 「どこのお約束なの?あなたが大尉の頃こういうものを掛けていたとか?」 「俺にはこれがあるからな」 己の前髪をかきあげて彼は笑う。少しだけ覗いた右目が表情に不似合いな強い眼光を放っていた。 彼女にはそれが少し恐ろしくもあり、彼にもその感情は伝わっていたようで、髪を元の様に垂らして笑みを強くする。 「これはなかなか便利だよ。視線を隠すことが出来る――余所見をしても平気だ」 「私には見つめていたい人なんていない」 「視線の先は生きている人間には限らないさ」 彼女は応えない。それが答えだ。彼は右目を隠したま[…]
普段は食べない人たちも SRWNovel

普段は食べない人たちも

今日はレーツェルが台所に立つということで、食堂は大賑わいだ。 少しピークタイムを外して行ったが、それでも人でごった返している。 「ヴィレッタ大尉、こっち開いてますよー!」 もっと時間をずらすべきだったか、という思考に割り込んできた声。 ――苛烈なクールビューティー。 実態は“意外と親しみやすい”と言われているが、それを知らぬ人間にはそう表される彼女に親しげに話しかける人間は限られている。 たとえば直属の部下であるSRXチーム、たとえば付き合いの長いラーダ、たとえば誰とでも打ち解けるエクセレン、たとえば―― 「…………すまない、あなたたちをコードネーム以外で呼ぶ術を知らないの」 「がぁっ!? 俺[…]
絡み合う嘘つきたちの真実 SRWNovel

絡み合う嘘つきたちの真実

口先で数重ねてきた嘘の中で生きてきた真実。 この世界で君たちと出逢い君を愛した。 嘘だと言い切れたら、どれだけ楽だっただろう。 君を愛してしまったこと。 君にとっても痛みにしかならない。 俺にとってもいつかは苦しい思い出にしかならない。 どうせ俺は嘘つきの罪人だ。 言ってしまえ、君への言葉も全て嘘だと。 しかし口は思考を裏切る。 「愛しているよ」 「それならあなたのことを抱きしめさせて」 「俺としては俺から君を抱きしめたいんだがな」 「嘘つき。誰かに繋ぎ止めて貰うの待っているくせに」 「それは君自身だ」 「そうよ。嘘つき同士よくわかっているじゃない」 「それでは嘘と妥協に満ちた夜を始めようか」[…]
太陽と月 SRWNovel

太陽と月

アポロン、ヘリオス、リュケイオス、アギュイエウス。 ギリアムの別の顔、もしくは半身の名前。 全てギリシア神話の太陽神に由来するのだと、あの決戦の後でヴィレッタは教わった。 「あなたには夜の闇を照らす月の方が似合うかもしれないわね」 くすり、と口角を上げる。 何の悪気もなく、ただ彼には闇と静寂が似合うという理由で。 「俺という月を照らしてくれる太陽はもういない……だから俺が太陽になるしかないんだ」 彼も笑っていた。 何もかも諦めて、笑うしかないというように。 彼もまた鎖に縛られているのだろう――イングラムとは違う形で。 ヴィレッタにはそれがわかってしまう。 そしてイングラムと重ねてしまうことを申[…]
黒服が似合う2人で SRWNovel

黒服が似合う2人で

俄に降りだした雨に動じることなく、ギリアムは鞄から折りたたみ傘を取り出した。 「流石準備がいいのね」 「いや、2人で入るには少し小さかった」 ヴィレッタの方に傘を傾けて、口元を歪める。 身を寄せるとそのままの距離を取ろうとじりじり動く。 「私に近寄られると嫌?」 「そんな訳がないだろう。ただ、ちょっと雨に濡れたい気分なだけだ」 「何それ。風邪引くわよ」 「『雨の日に傘をささずに踊ってもいい。自由とはそういうことだ』という格言があってな」 ギリアムの言葉に、傘を持った手と鞄を持った手を握る。 荷物が当たるのを恐れて、振りほどくことが出来ない。 「一曲、踊ってくださらない?」 「ここでか?」 「自[…]
春咲小紅 SRWNovel

春咲小紅

桜の季節であるらしい。 花見の話題がこの極東基地でもあちこちから聞こえる。 さぞ美しいのだろう。見てみたいものだ。 だが、花見と言って騒ぐのは好かない。 リュウセイやアヤが企画しているが、あまり乗り気でないのが正直なところだ。 一緒にいけば、楽しいに違いないのだが。 せめて、周りが騒がしくないところで出来ればいいのだが。 そんな時に、ギリアム少佐と廊下で会った。 軽く挨拶をしてすれ違おうとすると、彼は話をする気のようだ。 「ヴィレッタ、今週休めるか?」 「ええ、明後日は休みだけど……それが何か?」 何か思惑があるに違いない。 彼なら容易に人の休みを把握できるだろうから。 仕事の依頼かと思ったが[…]
ホワイトデーの突撃狂 SRWNovel

ホワイトデーの突撃狂

「……やはりこれも失敗か! 忌々しい!!」 ギリアムは彼には珍しく、声を荒げていた。 珍妙なのは声の調子だけではない。 失敗をした、ということ。そして、エプロンをつけていること。 彼はため息をついて、テーブルに無造作に置かれた紙を摘み上げた。 紙にはクッキーの作り方、と書いてある。 彼はオフである今日3月13日に、半日近くずっとこれを見ながらクッキーを焼き続けていた。 エルザム直筆のレシピだけあって、料理については初心者マークのギリアムでも、それなりの物は作れるようになっている。 ただ、彼にとって不幸だったのは、本家のエルザムのクッキーの味を、彼がよく知っているということだった。 プロ級の腕前[…]
新たな誓いと気付いた感情 SRWNovel

新たな誓いと気付いた感情

――君は、誰なんだ? ギリアムの夢に出てくるおぼろげな影。 わかるのは、それが女性であることと、彼女が悲しんでいること、そしてその影に恋をしていることだ。 顔も交わす言葉も知らない。それでも彼は恋慕の情を抱いていた。 理由や過程はない。ただ彼女に恋をするという結論があるだけだ。 予知という能力を持つ彼には、たまにそういうことが起きた。 結果が先にあり、そこから過程を導き出して、自らが起こす行動を決める。 そうして彼は予知を実現、或いは回避していた。 しかしこの事態は流石に未知のもの。 誰とも知らぬ相手にも関わらず、止められずに焦り、身を焦がすようなその感情を制御することが、彼には出来なかった。[…]
笑っても、いいですか? SRWNovel

笑っても、いいですか?

イングラムから託された使命を果たすために私が選んだ接触対象は、情報部のギリアム・イェーガー少佐だった。 マオ社経由で口を利いてもらってもいいが、イングラムが使ったルートでもあるし、別の後ろ盾が欲しかったのだ。 元々直接は関わっていないが、裏では――表でもマオ社の人間としてSRX計画に関わっている。 別に不自然ではないはずだ。 テストパイロットとしての実績はあるし、それ以外にも実力を示せと言われればすぐに出来る。問題はない。 経歴や戸籍は誤魔化しきれない部分があるが、この不安定な時勢ではそういったものはあまり意味を持たない。 ギリアム少佐自身、軍に入る前の経歴は不透明だ。 故にそこを突いてくるこ[…]
一人パニック・214 SRWNovel

一人パニック・214

ギリアムは他のことはいいかげんだが、人付き合いについてはマメな男だった。 普段世話になっている人間を漏らさずリストアップ、人数分のプレゼントを確保。 だが、今年のバレンタインデーは一味違う。 ――――わざわざ取り寄せた総天然原料で作る甘さ控えめココアクッキー……ヴィレッタは気に入るだろうか。 レーツェルの講義をみっちり受けたから大丈夫だろうとは思うけれども。 急に眩暈がしたのはオーブンを開いた時で、ようやく出来た原型を落とさないよう必死にならなければならなかった。 ――――――バレンタインの当日。 自分のプレゼントをヴィレッタが食べることはない。 暗い所に放り捨てられてしまう。 そして、自分は[…]
ゆっくりと、きらめいて SRWNovel

ゆっくりと、きらめいて

ふと窓の外に目をやると、闇の中雪はまだ降り続いていた。 ヴィレッタが作業を始めたときにはちらつく程度だったが今は本格的になって管制官を苦しめている。 ――――ギリアム少佐は待っているのだろうか。 夕方5時、公園の噴水前で。 時計を見ると約束の時間はとうに過ぎていた。 トラブルが起きてしまったこと、その対応に追われること自体はヴィレッタの責任ではない。 ただ、Dコンがこんな時に故障するなんて思いもしなかった。 別の方法で連絡を取るには、時間が足りなかった。 約束を無断で破ったのは辛い。 しかしそれ以上に白い沈黙の中独り守られない約束を信じて待つ彼の姿を想像すると。 ――諦めていてくれればいい。 […]
ベットOK? SRWNovel

ベットOK?

珍しく仕事の少ない時期。 極東基地の休憩室のひとつでコーヒーを飲みながら、ギリアムはため息をついていた。 「暇なのはわかるけど、ため息をつくと幸運が逃げるわよ」 頭に軽く書類を載せられた。 首と身体は固定したまま、視線だけを動かしてヴィレッタに答えた。 「君が迷信を口にするとは思わなかったな。それで何か用かい?」 「用っていう用じゃないけれど、あなたの暇を解消してあげようと思ってね……賭けを持ってきたのよ」 ――何か、企んでいるな。 ギリアムはヴィレッタの声の調子から直感的に、そして経験則として感じ取ったが、そのまま続きを促した。 「PTで私と三本勝負……あの時は直接戦闘はなかったから、実力差[…]
ChristmasGift SRWNovel

ChristmasGift

 CC097年12月 白い雪にイルミネーションが映える。 クリスマスを目前にして、街は下準備をするサンタクロースで溢れかえっている。 研修中のゼウスの面々にも街の熱気が伝わってきていた。 「もうすぐクリスマスか……なぁ」 「パーティーをやっている余裕はないぞ」 光太郎の舌にダンが釘を刺す。 「まだ何も言ってねぇじゃんかよー。あれか? ウルトラ族の特殊能力か?」 「そんなものがなくてもわかる」 「光太郎さん、わかりやすいですからね」 アムロとダンから攻撃を受け不貞腐れた光太郎はギリアムに助けを求める。 出会って1週間の彼らだが既にこの流れは確立されたものだ。 「ギリアム、お前だってパーティーやり[…]
遭遇 SRWNovel

遭遇

外の様子は、耳にすることが出来る。 しかし、干渉することは許されない。 それは思ったよりも耐え難いことだ。 今は時を待つしかない。 過剰な期待は、していないけれども。 「面会だ!」 さて、何が出るだろうか? 「ヴィレッタ隊長、お久しぶりです!」 情報部、と聞いたときはまさかと思ったが、目の前にいるのは紛れもなくアヤ大尉だった。 投獄されてしまった私ほどではないが、アヤも行動にはかなりの制約を受けているはずだ。 SRX計画は上にとって不都合な点が多すぎる。 その為にチームは解散させられ、アヤは情報部に送られたのだから。 当然、私と面会するなど許されるはずがない。 そうなると。 アヤの背後の男性…[…]
意気地のない俺に SRWNovel

意気地のない俺に

壁の向こうからシャワーの音が聞こえてくる。 ――――何でこんなことに、いや、この状況をどうにかすることをまず―――――― わざわざ部屋まで仕事を手伝いに来てくれたヴィレッタに礼をしようと料理をしたところまではよかった。 しかし手元が狂ってソースをブチ撒けて彼女の服と髪を汚してしまった。 慌ててシャワーを浴びるように言って、汚れた上着を洗濯機に放り込んで床を拭いているところで己の発言のまずさに気付く。 男の部屋で女がシャワーを浴びる。ましてそれを命じたのだ。 この状況が何を意味しているのか知らないのならそのまま流せるのだが、生憎と知識も経験も積んできたわけで。 慌てていて忘れていたあの時ならとも[…]
ずっと願っている SRWNovel

ずっと願っている

廊下ですれ違っても一瞥するだけの君。 俺ではない誰かと談笑する君。 君に限らない。 この艦の中で俺が混じれる場所はない。 何故なら皆、俺を知らないから。 ――――息苦しさに目を覚ました。 夢。 そう、悪い夢。 現実――この世界がそう呼べるとしたら――では、違う。 少なくとも、ギリアムにとってはそうだった。 ――この部隊こそが俺の居場所。 そう断言できるほど居心地が良かった――情報部の面々には悪いと思っていたが。 しかしあの夢は過去に起こったかもしれない、或いはこれから起きるかもしれないこと。 それが予知能力者である彼の特性。 ――皆が、俺を、忘れる。 考えるだけで背筋が凍った。 考えていなかっ[…]
心のあたたかい人 SRWNovel

心のあたたかい人

日本の夏は蒸し暑い。 おまけに今2人がいる会議室は今しがた冷房を入れたばかりで、じりじりと汗がにじみ出る。 しかも彼女の隣にいる涼しい顔をした仕事相手の髪型はその暑さを増長させる。 ――バリカンか鋏はどこにあったかしら? しかし彼も内側では焦れていたようで、冷たい物を買ってくると言い出した。 「ちょっと待って少佐。私の分のお金……」 さっさと行こうとする彼の手を思わず掴み、2人の背筋が同時にびくりと震えた。 冷たい。 この夏日の蒸し暑い会議室にはまったく不似合いの冷えた指先。 ヴィレッタはしばらくその手を掴んだままだった。 「……ヴィレッタ?」 「少佐、病気? 冷え性?」 「生憎俺は健康そのも[…]
きっとそれも愛と呼べる SRWNovel

きっとそれも愛と呼べる

超機合神バーンブレイド3。 3機のメカが変形・合体し、3種類のロボットになる、リュウセイお気に入りのロボットアニメ。 ハジメ博士や、あとリョウトとも熱く語っている。 世間事に疎い私やマイに真っ先に薦めたのも、それ。 現実の軍事と照らし合わせてどうかはともかく、夢に溢れた話ではあった。 バーンブレイドのパイロットたちの絆。 敵味方を超えた共闘。 彼らを支える作中では名を与えられなかった兵士たち。 私たちの部隊にも似ている、と思った。 今日はそれではいけない、と奮起したアヤが――ラーダにもよく言われたし気持ちはわからないでもない――映画に誘ってくれた。 吸血鬼をモチーフにした恋愛映画。 何でも、彼[…]
聖なる亡霊 SRWNovel

聖なる亡霊

クロガネと別れ、伊豆基地に帰還せんとするヒリュウ改。 そのデータ室でうとうとしていたギリアムの頬に、熱いカップが押し当てられた。 驚いて覚醒すると、それを行なっていたのはヴィレッタ。 「寝るなら個室にすることね……コーヒーと、携帯用食料」 「気が利くな。しかし特に栄養補給の必要は感じないのだが」 「消耗しているんでしょう? システムXNの仕組みは知らないからそれが原因かは知らないけれど」 「皆の力を借りたしそれほどでもないさ。SRXチームの心配をした方が懸命だ」 「私は隊長よ? そちらは既にフォロー済み」 「それは失礼。では、ありがたくいただくとするか」 笑ってそれを受け取る。 それを見たヴィ[…]
Hoffnung SRWNovel

Hoffnung

「ギリアム! 何故お前が……!」 「あなたが戦ってきたのはそのためだったの!?」 諦めきれない仲間の声。 答えず通信をオフにする。 ――――そう、全てはこのために。 混沌を呼ぶ者を全てこの世界から、あらゆる次元から、排除する。 安息の、未来のために。それが、俺の贖罪。 しかし思い浮かぶのは先程の彼らの表情。責める声。通信は遮断したのに。 モニターを見ると座標やエネルギーは荒れ狂い安定することがない。 この状況に古い記憶を掘り起こした。 ただ、帰りたかった。 それなのに笑顔がどうしても思い出せず、戦いの記憶ばかりが頭に浮かぶ。 混乱と狂気。 気付いた時にはシステムは暴走。単身この世界に飛ばされて[…]
Versprechen SRWNovel

Versprechen

私は不安だった。変化を恐れていた。 変わらなければならないのはわかっていた。 私も、あなたも。 だが、変わってはならないもの――そう思っているものまで及ぶのではないか。 私は信じたかった。 疑いたくなかった。疑いようもないはずだった。 色々変わったけれど戦いの意義も私を包む微笑も声も変わらなかった。 ――――なのにこの違和感は? 私の思い違い? あなたが離れていく気がする。 あなたと噛み合わなくなっていく気がする。 あるいは、最初から――――――――? ――――ひとつだけ、答えて。 ギリアム少佐――あなたが望む世界の中で、未来のあなたはどうしているの――――? ********** そう、あな[…]
愛しています、心から SRWNovel

愛しています、心から

ヴィレッタと共にいる時のギリアムは楽しそうだ。 お互いの仕事の手伝い。演習相手。たまの買い物と食事。 無愛想もいい所の彼の口元が微かに緩み、目つきが優しくなる。 恋人同士だという噂は既にほぼ確定の情報として出回っている。 そんな噂に、ヴィレッタは悪い気はしなかった。本人も、そうだと思っていたから。 少なくとも彼女自身は、彼に恋愛感情を持って接していたから。 ――――しかし、不安でもあった。 キスなどの事実はないし、好きだとかいう類の言葉を彼から聞いたことはない。 抱きしめてもらったことならある――――どうしても泣きたくて仕方がなかった時、胸を貸してくれた。 決して嫌われてはいない。嫌いな相手を[…]
涙を拭いて SRWPict

涙を拭いて

13代目TOP絵のギリヴィレ。 っはーーーーーーーーっ! やっちまったい!!って感じです。 滅多に泣かないけど泣いた時にはお互い涙を拭きあえるそんな感じだと嬉しい。  […]
どこにも行かないで SRWPict

どこにも行かないで

OG2ギリヴィレイメージ。 途中のやりとりが辛かったです。 最終的にはハッピーエンドでひと安心。 回転版。 ギリアムさん的にはヴィレッタさん(と仲間)を想ってのことなんだよなぁ。 なお波多野は凄く発狂していました。  […]
お礼 SRWPict

お礼

3代目TOP絵、春仕様ギリヴィレさん。元々は小説の挿絵。 でも原文より遥かにやりたい放題。 しかしまるで百合のよーです。身長差なくなってるし。  […]
“希望”の大地にて SRWNovel

“希望”の大地にて

「ここはこのコロニーで一番大きな公園なんだ」 ヴィレッタは興味なさげに頷く。 実際、興味なんてない。 湖が綺麗だとか緑が豊かだとか言うけれども、結局、それは偽りにすぎないのだから。 「本社から、エルピスでちょっとした仕事をやってくれって」 そう言うとラーダは補給やら整備やらで手が離せないから、とすまなそうに頼んできた。 ヴィレッタとて仮にもマオ社社員。 彼女向きとは言いがたい、量だけは多い雑用の類だが、そういう仕事もしなければならない。 「でもちょっと場所がわかりにくいわね」 「そうね。一応地図はあるけれど…………あら、少佐。珍しいですね。私服なんて」 軽く挨拶をして二人の横を通りすぎた人影。[…]
雨の中で SRWPict

雨の中で

「希望の大地にて」挿絵。 身長差結構あると思うのですがどうなんだろう、と思っていたら後で公式発表されましたね。  […]
こんな日もあるさ SRWNovel

こんな日もあるさ

宇宙へ上がり、エクセレンも無事に取り戻したハガネ及びヒリュウ改の面々。 しばらく敵襲もなく、各員は自機の調子を整えつつ、訓練や趣味に勤しんでいた。 しかしそんな時間さえも混乱に奪われてしまうのは、戦士の宿命だろうか。 平和は、長くは続かない。 悲鳴とも怒号ともつかぬ叫びが、ヒリュウ改であがった。 オペレーターのユンは艦内の異常を手早く報告した。 「艦長、食堂で騒ぎが起きているようです」 「食堂!?」 食堂で騒ぎになるとしたらおかずが多いとか少ないとかの口論だが、今は食事時ではない。 何事だろうか。 ユンが映像を出そうとする間もなく、向こうからコールが入った。 「ど、どうすれば、どうすればいいん[…]
信じたい、だから SRWNovel

信じたい、だから

簡単な、ことだ。 実行するだけなら。 肝心なのは、その一歩を踏み出せるか否か。 踏み出すための、理由。 本当なら、黙っていられないから、で充分。 それで足りないなら、早く行かなければコーヒーが冷める……を付け足そう。 どこかで狂っている思考は、まだ迷いの靄がかかっている。 しかし、迷っている暇なんて、俺にはない。 「ヴィレッタ」 彼女が、振り向いた。 「コーヒーの一杯くらいは飲んでおいた方がいいのではないか?」 オペレーションSRWは現在艦隊戦の最中だった。 格納庫では来るべきフェイズ4に備え、急ピッチの作業が進められていた。 そして我々パイロットは、「急いで休め」と艦内待機を命じられていた。[…]
Greensleeves SRWNovel

Greensleeves

夜が、更けてきた。 情報の整理は大体片がついたし、BGM代わりの音声データも大した事は入っていない。 そろそろ寝ようか、と思ったところでヴィレッタの思考が止まる。 そして慌てて一つのデータを再生しなおす。 聴き間違いではない。 何度も繰り返した。 「どういうことなの……?」 一緒にする仕事の時、大抵はギリアムが呼び出すのだが、その時呼び出したのはヴィレッタの方だった。 「ごめんなさい、少佐。どうしてもあなたの見解を聞きたくて……」 「構わないさ。それで、何について聞きたいんだ?」 「音声データよ。今、再生するわ」 『お前がイングラム・プリスケン少佐か……』 『……む? この男…………何者だ、貴[…]
「お互い様」だから SRWNovel

「お互い様」だから

ようやく、長い戦いが終わった。 機体が運び出され、静まりかえったヒリュウ改の格納庫。 ギリアムとヴィレッタの二人を除いては誰もいない。 話すことは色々あった。 この戦争のこと。イングラムのこと――これからのこと。 「それから……あなたにお礼を言わせて」 「礼?」 「そうよ……」 言葉の内容より、その響きに疑問を持って問う。 意外なほどに、優しかったから。 ヴィレッタがささやく。 「あなたは、私を信じてくれたから」 ヴィレッタの微笑がすぐそこにある。 どういうわけだか、そうしなければいけない気がして。 視線を少しだけ外した後、ギリアムも微笑する。 「……それはお互い様、さ」 ネビーイーム。地球側[…]
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