後ろめたさの協奏曲
ヴィレッタはギリアムと通信を行っている。
完全に1対1の秘匿回線、よくこういうものを準備出来たものだと思う。
ヴィレッタの着任の時の根回しといい、手慣れている。
パイロットとしてもそうだが、工作員としても優秀なのだと改めて頷く。
「すまなかったな、ヴィレッタ。受け取ったデータとプログラムを概ね確認したが問題ない。手伝ってくれて助かる」
「そういう約束でしょう? 気にしないで」
モニター越しに笑いあう。
「それに、たったこれだけ用意すればそれを口実にあなたと話せるんだもの。安すぎる対価よ」
「嬉しい言葉だ」
「……あなたにしか言えないこともあるし」
「そうかもしれないな。だから君の悩みならいくらでも聞くさ。力になれるかはわからないが」
ギリアムの優しい声に安堵する。
「……やはり後ろめたいわ、正体を隠していることが」
「君が話したくなったら話すといい。彼らもわかってくれる」
「そうね。わかっているけれど話すのはやはり怖いものよ。ギリアム少佐には隠し事なんて出来そうにないし、聞かれたから話したけれど」
「彼らも本当はわかっている。ただ、君から話すのを待っている。俺は勝手だから強引に聞いた」
「いいのよ。話せて楽になったし、あなたの協力で思った以上にすんなり今の立場に収まれたから」
「そう言ってくれると助かる」
そのまま微笑し、ある程度軍や任務に関わりがあるが他愛のない話を続けていた。
「ッ……!」
「ギリアム少佐?」
ギリアムの顔が突如歪み、心配の声をかける。
「ああ、大丈夫だ。少し調子が悪い」
「過労じゃないかしら。少しは息抜きしたら?」
思い当たる所があり言葉を続ける。
「それとも何か悩みでもあるの? 力になれるかはわからないけれど、良かったら聞くわ」
真剣に見つめあう。
先に表情を崩したのはギリアムだった。
「そうだな、君になら話しても良さそうだ。俺の隠し事のことだ」
「隠し事?」
「俺も人間じゃない」
衝撃が走った。
「不老長寿の種族でね。戸籍は捏造さ」
「……話して、良かったの?」
「話したいと思った。君にだけは」
「ありがとう、ギリアム少佐……勇気を出してくれて。私を信じてくれて。大丈夫、あなたが何者でも私はあなたを信じるわ」
「ありがとう、ヴィレッタ。感謝する。もう1つの隠し事も言っておこう。俺には予知能力がある」
「先程のものに比べると些細ね。シャイン王女もだし、ラーダも少しそんな感覚があるみたいだし」
「そうだろう? 1つ言ってしまえば他のことも大したことはなくなる。そして見た。真実を彼らに話し、真の結束を得る未来を」
「ふふっ……ありがとう、ギリアム少佐。もう少し考えて、その未来を現実にするわ。今日はここまでにしておこうかしらね。また何かあったら声をかけてちょうだい」
「君からもいつでも言ってくれ。では、またな」
微笑みあって通信を終えた。
暗転したモニターを見つめる。
「……些細なことだ。奴らが現れることに比べれば」
後ろめたさと共に彼女の微笑を思い浮かべた。
————–
OG1とOG2の間のギリヴィレです。仲良しですがあれこれフラグが立つ話です。
「ギリアムはヴィレッタにどこまで話しているか」は自分の中でも決着がつかないので小説ごとにブレます。今後もブレ続ける所がブレません←
OG1&2を通じてギリアムとヴィレッタは「正体を隠す」「信頼して話し改めて仲間になる」をしています。お互い以外にも。
OG2の実質主人公のラミアもですね。そういう話です。