猛暑の慰労会
新西暦の時代においても、日本は四季の国として知られている。
「あづい~」
アラドが溶けている。彼は時折り形を失い、軟体生物と化す。
「アラドは少し極端だけど、暑いわね」
「今年はまだ耐えられる暑さだ。湿度が低いからな」
「いや、生粋の日本人のカイ少佐にはそうかもしれないっスけど!?」
少年の姿を取り戻した。
「こんな暑いのに軍の食堂はいつもの! 夏野菜! 肉! 食いたい!」
「……という訳でお前たちには浅草から召集がかかっている。日本の夏を満喫してほしい、と」
元スクールの3人はパッと輝いた。
「ジャーダ、ガーネット!」
「流石ね! それ以上にコウタが張り切ってそうだけどショウコもこういうの好きだし」
「修羅の人たちと祭りだワッショイ!」
ワイワイと年頃の子供らしく騒いで、ラミアに引率されていった。
「かなり夏休みのノリね」
「あいつらはあれでいい。そしてお前たちも何か息抜きをするといい。今の情勢は安定している」
「了解。行くぞ、アクア」
「えっ!?」
ブリーフィングルームを出て、アクアは詰め寄る。
「ちょっと、説明しなさいよ!」
「部下を休ませるのも隊長の任務、つまりあれは命令に近い」
「そ、そうね。カイ少佐は厳格だから私たちが休まないと休めないし」
状況に対する同意を取ったヒューゴは笑う。
「という訳で息抜きだ、楽しくやろうじゃないか」
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この期間だけ広場に特設されたビアガーデンは、風が通ることと緑があることから熱を下げてくれた。
「いいわね、こういうのも」
「お、意外とイケる口か? ワインとか果実酒のイメージだった」
「たまにはバーっとやらなきゃね」
とりあえず。
「乾杯!」
「お疲れだ!」
スタンドで購入したビールを手に席につく。
一般的な休日や仕事終わりの時間でないせいか人はまばらで過ごしやすい。
「苦いー、でもイケちゃう!」
「暑い時と疲れた時はコレだ。アルコールもあんまり強くないしな」
「飲みにくいから酔わなくて済むしね。食べ物も色々あるし」
アクアが輝いている。
お互い真面目だが息抜きも必要だ。
「食いすぎるなよ。あと限度を知らない奴がたまに呑むと危ない」
「な、なんか凄く実感が……」
「法律でイケるようになった時フォリアと飲み合って潰れた」
「そうよね」
「お前が潰れた後某白騎士に飲まされ続けて、分の悪い賭けが嫌いじゃないあの人が奪って飲みまくって潰した」
「そ、そんなことが!?」
「お前は記憶をなくすタイプのようだから気を付けたほうがいい。あそこは限度は越えないがセクハラとアルハラとギャンブルには良識が働かない」
飲み会についてはともかく、後者には心当たりしかない。
「あれでも民間上がりが増えて少しマトモになった方らしい」
「平均年齢上げちゃってるけどね……」
屋台の食べ物とビールを口に仕事への愚痴を言う。
酔っても軍規には触れないあたりが彼らの真面目さだ。
「疲れた時はビール、ね」
「暑い時もな」
日も落ちて涼しい風が吹き抜けた。
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夏です。暑いです。例年と違う暑さです。5月と6月と7月頭と7月末で全く違う暑さです。
にじおじ以降の鋼龍戦隊が真面目になったのは常識と良識の塊の民間人であるD組と同様の軍人のヒューアクのおかげだと思っています。
という訳で彼ららしくお疲れ会です。個人的にはヒューゴもアクアも少しアルコールに弱いイメージです。