何でもない日のプレゼント
ギリアム・イェーガーは予知能力者である。
唐突な予知に慌てず平静を装うのも彼にとっては慣れたものである。
――ヴィレッタが笑顔でプレゼントを渡してくれる。
そんな嬉しい予知であっても。
なるほど、部下に何かとギリアムの好みについて探りを入れているのは――と納得するが腑に落ちないことがある。
――何のためのプレゼントだろうか。
バレンタインではない。クリスマスでもない。戸籍上の誕生日でもない。
思い当たるところを考えてみるが皆目見当がつかない。
問いただしたくなるがこれはまだ予知だ。
何食わぬ顔で日々を過ごすしかない。
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「ギリアム、これ」
綺麗にラッピングされた小箱。
予知のとおりだ。
「おや、君からの贈り物というのは嬉しいな。しかし今日は2月14日でも12月24日でも俺の誕生日でもないはずだが」
「口実がなければ駄目?」
「ああ。そういうことか。なれば喜んで享受せねばな。ありがとう、ヴィレッタ」
中身も予知通りの部屋用のアロマポット。柑橘系の香り。
何よりも、何でもない日に下調べまでしてプレゼントをしてくれたということが嬉しかった。
「大事に使ってね」
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――ギリアムはやはり気付いていない。
ここ数日のように素知らぬ顔をしているという風ではなく、本当にただのプレゼントだと思っているようだった。
それならそれでもいい。
来年も、またその後も、こうしてこの日にプレゼントを渡していけばいい。
そうしていくうちに彼にとっては『何故かプレゼントを貰える日』になるのだろう。
あのアインスト空間から帰還して、システムXNを破壊して、あなたが笑って帰ってきたあの日を。
笑顔の中に涙が混じっていたあの日を。
――あなたが無事に帰ってきてくれますように。
――――あなたがどこにも行きませんように。
そんな祈りをプレゼントに込め、私は意味を込めなかったフリをする。
ワンライ用SS。お題は『知らないフリ』
何年も続けばいつかは少佐も気付くんでしょうが本人が気付くまではヴィレッタさんは『知らないフリ』です。
ヴィレッタさんにとっては『ギリアムと出会った日』でもあるんでしょうね……などと言ってみます。