面影に捧げるHappyBirthday

ヴィレッタの戸籍上の誕生日は11月14日だ。
そして、ギリアムの誕生日は11月20日――こちらも戸籍上そういったことにしている、というものだが。
「1年365日、或いは366日、誰かしらの誕生日であるものだが、君と近い誕生日というのは少し嬉しいものだな」
彼はそれを確認した時言葉どおりに表情を崩した。
そういった月に、外出許可が出て互いのプレゼントを選びに出た。食事とデートも兼ねている。
お互いどうにも色気のない誘いが多く、それも嬉しくはあるがたまには恋人らしい過ごし方をしたいと感じている。
「すまない、寄り道をしても良いだろうか。忙しくならないうちにゼンガーの誕生日のものも用意しておこうと思ってな」
ゼンガーは1月生まれだ。忙しくならないうちに、とはいうが今もようやく1日だけ出られるような戦時だ。
強いて言うのであれば、彼の専門分野である次元を越える敵の出現や、彼女のチームでOOCの許可を出すといった差し迫った状況でもないが。
だがすぐに戦乱の暗雲が広がるであろうことは明らかで、彼の前線への到着が早いのも無理のないことだ。
「ええ、私は大丈夫。余裕のある時に……どうしたの? また何かを?」
彼の表情が急に強ばったのが見て取れて、思わず案じてしまう。
「いや、そうじゃない……それまでに終わらせる、という発想が出ないのは危険だと自覚しなおしただけだ」
月で数えれば2ヶ月後。ゼンガーの誕生日は年初のため準備期間はもう少し短くはなるが『その時はもっと忙しくなる』ことを前提に動きすぎている。
「懸念を持つのはわかるわ。それでも、私たちはその前提で動く必要がある」
「……わかっている。単なる自己嫌悪なんだ、これは。ある時は顔まで思い出せずにいた昔の友人の誕生日が、今日だったことを……先程思い出しただけなんだ」
並行世界を渡る彼の過去や記憶を語ることが、どれだけ今の世界に影響を与えるか――という、タイムパラドックスの実証実験をする気は彼にはない。
『未来』ならいくらでも語る。少なくとも、彼の見るものについては変えられるものであると知っている。
彼にその実力をもって教えてくれた戦友は、戦争も、そして世直しというものも嫌いな人間だったから、やはり許して貰えてないないのではないか、という悔恨も語るつもりはない。
「あなたのお友達なら、とても楽しい人なのでしょうね」
そしてヴィレッタは、彼が語りたがらない過去は知らずとも、彼はその後悔のためにまた後悔を重ねてしまう性分だと知っている。
「君は少し誤解をしていそうな気がするが……そうだな。気のいい奴だ」
「優しい人に恵まれたから、あなたは優しいのだものね」
そして、縁というもの、出会いだけは否定したくないことも知っている。
「ああ、そういうことにしておこう。要するに、発想を変えればいい。平和に生きることが最も忙しく、そして平時中に会いに行ってはならないという規則もない」
今日は、11月4日。
この日に生まれた機械いじりが好きな、皮肉屋の彼は。
(…………思い出した。あの世界でも、俺たちは出会っていたな。そして……今度こそ、共に戦い抜くことが出来た)
この世界にはいるはずもないが、その姿は二度と見失わないだろう。
「……その友人の好物は、確かハンバーガーだった」
「ジャンキーなのね。今のお友達とは違って。いいわよ、昼食はそれにする、ってことなのでしょう? そのかわり、私の分も全力で選んで」
「かわり、ではないさ。いつでも全力で……君のことを、大切にしている」
代替が効かないから、友人なのだ。
「ええ。私も、あなたを大切にしたいから」
未だに、そしてその存在から貰った眼を持つ限り永遠に見出す半身の影も含めて、ヴィレッタの見る、ギリアムなのだ。

「かなり早いけれど、誕生日おめでとう、ギリアム少佐」
半身が用意した戸籍にある日付の由来を聞かなかった彼女は、心からそう告げる。
「ああ、お誕生日おめでとう、ヴィレッタ」
大切な友人と出会った日だと語った、彼と共に。

 

――――――――――――――――――――――――

 

物凄く久し振りにギリヴィレを書きました(久し振り?)
ギリアムさんは中の人準拠だと11/12です。ヴィレッタさんの中の人は11/14です。13日はギリヴィレの日(定期妄言)
SHO発売日はどちらかというとイングラムの戸籍上誕生日になりそう。
いずれにせよ蠍座で、推し誕生月だー!と騒いでいたら「アムロ大尉も11月です!」とフォロワー氏から燃料投下されました。
なんとかその辺入れた推しカプ誕小説書こうと頭を捻らせて駄目押しでスパロボ30アプデで彼と再会できることが発表されたので、書けましたよ!

テキストのコピーはできません。