最後の戦い(ほぼ日課、10ターン経過)
「もー! フェアリさんの課題難しすぎ!!」
机をバシバシ叩き、うめき声とも悲鳴とも取れる不平を漏らす。
彼女の名は赤月光珠。遊ぶのが大好きで勉強が苦手な極普通の女子高生である。
少し前までは地球を護るスーパーロボットのパイロットという一面もあったが、地球防衛組の面々と同様に平和な日常へと回帰した。
復興支援でその活動をすることもあるが、学業に支障が出ない範囲でという学校の要請と彼女の姉同然のフェアリの希望により、その回数は減りつつある。
「戦争をなくすなら受験戦争もなくせば良かったぁ。あ、でも大学潰すのはダメだよね。どうすれば良かったのかな……」
「相変わらず独り言が多いなお前は」
いつの間にか背後に来ていた青年、彼の名はジーク・アルトリート。光珠の戦友である。
「ぎゃあ! ジーク!」
「ぎゃあって、鳥の鳴き声かよ」
「だってだって乙女の部屋にノックもなしで! 恋人でもやりすぎ!」
「馬鹿! 誰が恋人だ! だいたいノックもしたし声も掛けた。お前が独り言に夢中で気付かなかっただけだ」
「がーん」
机上に崩れ落ちる。
丁寧に指先で『の』の字を書きながら。
「お前なぁ、いちいちオーバーなんだよ。独り言が多いのもそうだし」
「そうじゃないの!」
ダン、と立ち上がりジークを睨みつける。
「恋人じゃないってどういうことよ! これまでのことは遊びだったの!?」
「論点そこなのか!? もっと他のこと考えろドアホ!」
「私はジークが好きだから考えられないよ!」
涙目で睨み続ける。
一方のジークは真っ赤になり頭を掻く。
「い、いや、そういうことじゃなくてだな……まだお前のクソ親父に許されてねぇし、今日ここに来るのもフェアリ以外は知らないし……そんなんで付き合っているって言えるかよ」
「私のこと好きなの!? 嫌いなの!?」
「好きに決まってるだろ! だからそういうことじゃねぇ! ただこの初等教育並の勉強に苦戦してるんじゃ先が思いやられるなってだけだ!」
「そっか!」
光珠の表情がパッと晴れる。
女心は秋の空とはよく言うが、まさしく秋空の如く高く晴れ渡った笑顔だった。
「ジークのお嫁さんになるために私勉強も頑張る!」
「……は?」
「先ってそういうことでしょ? これくらいの勉強が出来なきゃお嫁にいけないよね!」
机に向かい筆記用具を取る。
唖然としたジークが何かを言おうとするが、しばらく固まり言葉にならない。
フェアリに渡された差し入れの飲み物を机に置き、ようやく告げる。
「それ終わったら遊びに行っていいってフェアリが言ってたから、また後でな」
「うん、後でね、ジーク!」
飲み物に口をつけ、上機嫌で筆を動かす。
――――10分後。
「もー! フェアリさんの課題難しすぎ!」
不平を漏らしながら机を叩く。
「ジークに教えてもらえば良かったよぉ……」
彼女の戦いは、終わらない。
スパロボワンライ用SS。お題は『最後の戦い』
シリアス来ると思った? 残念、ジー秋ちゃんでしたー!
ジークからのツンデレデレデレデレを表現出来なかったので今後の課題。