今ここにいる幸運を
アーニーがUXに保護された時、正体を隠していた頃のサヤから『らっきーだったナー』と言われたことがある。
命が助かったこと。異星人との連携を強める軍の方針を知ることが出来たこと。
その時は素直にサヤの言葉を受け入れる事ができた。
しかし、世界の在り方を知って疑問が出た。
幸運でも何でもなく、必然だったのではないか、と――
何度も繰り返した世界。ジンが今のアーニーの位置にいた世界もあっただろう。
むしろこの親友2人はそういう風に仕組まれている。
片方がUXのような部隊に行き、サヤのような存在と出逢い、彼女を目覚めさせる。
この閉じられた世界がそれを脱却するために、蜘蛛の糸のように導かれてきた2人。
獲物が来さえすれば、中身がどちらでもいいということだ。
アーニーは少し虚しさを覚えた。
サヤと出会っていたのはジンだったかもしれない。
ジンに従う少女――アユルの傍にいたのがアーニーだったかもしれない。
もしかしたらサヤでもアユルでもない少女といたかもしれない。
――自分はただの、世界の歯車。
そんな考えがよぎる度、サヤの棒読みの『らっきーだったナー」を思い出す。
そして思う。
他でもないアーニーが、他でもないサヤと、こうして巡り会えたのは、やはり幸運なのではないか、と。
数多ある他の可能性から、今の2人になったのは、必然の中の1つの奇跡なのだ、と。
「サヤ」
「何かお呼びですか?」
「君を抱きたい」
買い物にいこうか、くらいの軽さでアーニーは告げた。
――あとは幸運を噛みしめるだけ。
そして二つ返事でサヤは了承した。
スパロボワンライ。2014/11の精神コマンド月間『幸運』で書いてお蔵入りしていたもの。
真っ先に思いついたネタはこっちだったのですが、何か完成度とかネタの練り具合とかが納得いかなくて……
ワンライとして投下したのはギリヴィレで『「幸運」持ちではないけど「幸せ」ではある2人』です。出来ればそちらも。