友と恋の話

レーツェルの料理が振る舞われた。
卓を囲むのはカイ、ゼンガー。
旧特殊戦技教導隊の親交を暖めるための会だ。
「ギリアムはどうした」
「呼ぼうとしたが邪魔しては悪いのでな」
「珍しいな。どれだけ渋ろうが無理矢理食べさせていたお前が。何かあったか?」
「いえいえ。ですが人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて、と言いますので」
ピンと来た。
古い仲だ。お互いのことは良くわかっている。
ギリアムが多くの者から冷静沈着、と評されているのを内心苦笑いしていた。
「まあ、そうだな。あいつは絶対自覚がないがな」
「そういう男だ」
「ヴィレッタ女史も苦労するだろうな」
食事と会話を楽しむ。話題は勿論、ギリアムのことだ。
「ところで2人で何をしていた?」
「仕事です」
「ああ、そういう奴だな…………」
呆れてしまう。
その欠点も含めていい仲間だが、恐らく家庭を持つには向いていないだろう。
「だが楽しそうだった。お互いな。嫉妬すら覚えてしまう。私といる時より楽しそうだからな」
「奴とて男だ。仕方あるまい」
「ふふ、わかっているさ。喜んで友の春を祝福しよう。願わくば、その春に花が咲くことを」
レーツェルは笑う。
少なからず苦笑いが含まれている。
「あいつは絶対に親友だと思っているがな」
カイが断言した。
「なまじ若く人が良く名前が知られ顔もいいだけに……何人泣かせただろうな?」
「断る時ははっきり断るからな」
「ああ。ヴィレッタ女史はそれをわかっている。だから告げられない」
「もどかしいな」
ギリアムは基本的には誠実である。
誠実であるが故に、敵と見なせば容赦はしない。
故に成果を上げる。
間違いなく優秀である――兵士としては。

しばらく話し、食事が終わった。
「やはり我々でやってみるしかないか。我々の方があいつ自身よりあいつのことをわかっているからな」
「女性を不必要に泣かせるのは男のやることではない」
「ゼンガー、お前は真剣だがレーツェルは面白半分だぞ? まあいい。俺も同意だ。ヴィレッタならあいつと上手くやれる」

********

「ヴィレッタが俺を好き?」
呼び出して、伝えた。
「……ああ、そうだな。俺も好きさ。お前たちと同じくらいな」
「即答しなかったあたりが正直だな」
「何のことだ?」
微笑する。
「お前とて気付いているはずだ。それが友情でないことなど」
「友情さ。そして親愛だ」
「とぼけても無駄だ。お前は冗談は好きだが嘘が下手だ。敵には平気で嘘をつくがな」
「流石よくわかっているな。だから、そうだと認めたくないんだ。俺はきっと」
「ギリアム」
レーツェルの声色は真剣だった。
「人はいずれ死ぬ。絶対に別れがくる。避けられないことだ。未来に怯えるより、今を大事にしろ。今は、今しかないのだから。後悔しても遅すぎるのだから」

沈黙が訪れた。

「……お前が言うと説得力しかないな、エルザム」
「エルザム? 誰のことだ? 私はレーツェル・ファインシュメッカーだ」
「フ、そうだな。この気持ちを伝えよう。ありがとな……カトライア女史は、幸せだな」
「ふふ。行ってこい」

********

レーツェルの料理が振る舞われた。
「ギリアムは?」
「デートだ」
「どこへ?」
「あいつの趣味だと……映画かな。多分スパイ映画だ」
「美術館かもしれん」
「いや、案外動物園かもな」
笑いあった。
まだまだ、知らないことばかりだ。
そしてヴィレッタだけが知っているギリアムがいる。
グラスを取り出して注いだ。
酒ではない。軍艦だから。そもそもゼンガーは下戸だ。
「ギリアムの恋に乾杯」
「「「乾杯」」」

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非常に自分の性癖に忠実なギリヴィレです。
アレですね! 私旧教導隊好きですね! トロンベ兄様好きすぎですよね!
トロンベ兄様は自重しないし非常にカッコいいから仕方ないですね!
周りが茶々入れるの好きすぎですね私。何書いてもそうなります。性癖が憎い。
ギリヴィレを2人の会話だけでラブコメとして成立させるのが上手いのは間違いなく公式です。
ギリヴィレは非公式カプですが公式最大手です!

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