噂の真相

ギリアムは笑っている。
「聞いたことがあるな。士官学校に流れているという特殊戦技教導隊の功績を誇張した噂話の存在を」
アクアは煌めいた目で尋ねる。
「はい。本当なんでしょうか。『ギリアム・イェーガー少佐は敵機が出撃する前に撃墜出来る』というのは」
「本当だとも、アクア少尉」
休憩室で立ち話になり再度追求に至るが、アクアもヒューゴも巻き込まれただけであることを再確認しただけで、残りは余興だ。
「ギリアム少佐、少しばかり語弊があるように思いますが」
ヒューゴは気に入らない、という感情が少し出て――――何が気にいらないのかわからないのがまた気に入らないが――――堅実に意見を述べる。
「つまりは潜入工作での撃破、もしくは戦艦や基地ごと撃ち抜く、ということでは?」
「ああ、その通りだ」
生真面目な指摘にケロリと自白する。
「ヒューゴ、少しは夢を見せてくれていいんじゃない?」
「夢を持つのも結構だが現実を見据えろ、アクア」
亀裂が入りだした――前提として、現時点でのヒューゴとアクアはまだパートナーとして互いを認めていない。
少しばかり茶目っ気を出した所で彼らの未来が変わることはないと判断し、アクアのリクエストに応え、伝説のエリートパイロットらしく振る舞ったのが今のギリアムである。
「2人とも冷静に、な」
故にコントロールもしやすい。
「噂というものの厄介な所でね、1人の何気ない言葉が取り返しのつかない尾ひれがつく。その噂通りなら俺は因果律操作でも出来ることになるのか」
「はい……失礼いたしました、ギリアム少佐。しかしそれも可能かと思わせる実力、流石です」
カイを前にした時程ではないがずっと憧れを語り続けている。
「おやおや、その様子ではあの噂は誤りかな。いい仲の人がいる、というのは」
「誰が! ヒューゴと!」
「ギリアム少佐、訂正を! 俺がアクアとなんて絶対ごめんだ!」
否定の息がピッタリ合ったのがまた気に入らなくて、睨み合う。
「ふーむ、そうだな。ツェントル・プロジェクトの不透明さはともかく、その調子でTEアブソーバーの動作安定に尽力してくれると助かる」
「了解、結果に繋げます。俺の方は、ですが」
「ちょっとヒューゴ! 私が不真面目みたいに!」
「更に言うなら俺はヒューゴとは一言も言っていないのだが、心当たりは」
「ギリアム少佐!」
「頑張りたまえ、若者たち」
ギリアムはヒラヒラと手を振って休憩室を去った。
「……アクア、ギリアム少佐は何歳なんだ……?」
「そ、それが軍のプロフィールでも“自称”とかついているし噂では全く老けないどころか若返っているって……」
「もう噂を追いかけるな。カイ少佐以外の真相は危険だ」
ざわめきが収まったのが何故かわからないまま、ツェントル・プロジェクトという泥沼に既に浸かっている事実をヒューゴは改めて噛み締めた。

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他者介入系好きですし、推しと推しがクロスすれば最高じゃないか的にヒューアク+ギリアムです。
未来知っているからってやりすぎですよギリアム少佐のお茶目さん☆
からかう側にギリアムいるのはレアですよね私の小説。初めてかもしれない!?
にじおじのヒューアクが仲悪い時点でギリアムいたかは置いておきます。参入遅かったからどうだろう……?

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