朝へと続く光

「大丈夫か? 震えている」
ギリアムのコートを掛けられた。防弾仕様で武器があちこちに仕込んであるせいか重く、そして彼の温もりを感じる。
彼の右手に座ったおかげで、その瞳を見ないで済む。きっと心配で揺らめいているのだろうけど、目が合わせられなかった。
先の出撃が終わって、格納庫で会った彼はこの展望室に私を連れてきた。気遣いが痛い。私は――――ただの人形なのに。
「!!」
己の思考に入り混じった囁きに身が強張った。まだ、残っている。ゴラー・ゴレムとの戦闘で揺るがされた自我の歪みが。
「……ねえ、ギリアム」
「断る」
予知能力ゆえか、状況からの判断か、彼は私の懇願を言葉になる前に断じた。
「有り得ない未来を論ずることに意味はない。星でも眺めた方が有意義だ」
強く引かれた勢いでギリアムの腕に身を委ね、天井越しに宇宙そらを見る。
「……地球ほしが、綺麗ね」
「ああ、俺たちが帰る、そして生きていく場所だ」
呼吸が整ってくる。彼のおかげだ。手を伸ばして髪を避けると、ギリアムは涙を流していた。
「いきなりひどいな、見られないかと思ったのに」
歪めた口元を頬に寄せ、震える声で彼は求めた。
「……ずっと隣にいてくれ、どこにも行かないでくれ、俺は君を失いたくない……!」
焦点の合わない瞳は私の痛みを彼が引き受けてくれたかのようで、堪えていた涙が流れた。
「ありがとう、ギリアム……傍にいて。共に帰りたいから。私もあなたを失いたくない」
今はまだ故郷とは呼べない青い星のもと、私たちは唇で誓い合った。

 

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診断メーカー『綺麗な星空の下、じっと見つめられてからほっぺにキスをされ、震える声で「ずっと隣にいて欲しい」と言われて、泣きながら「ありがとう」と言うヴィレッタ』です。
予知能力とスペクトラさんとの感応をネタにしすぎで割とワンパターンですが私はこれが好きなんだ!(力)
お題見た時点で星空=地球の浮かぶ宇宙、しか見えなかったのはこの2人ならではだと思います

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