今願う、無限の地平
誘ってきたのは、レモンからだった。
「男と女だもの。別に不自然でもないでしょう?」
おれは特に餓えていた訳でもないが、これで断ればレモンとの良き同僚としての関係すら崩れるというのは、それはそれで嫌だった。
険悪になり何の関係もなくなるよりは、恋人という関係になった方がマシ。
なりゆきと言うしかなかったが、考えてみればそう思えた時点でおれもレモンを愛しく想っていたのだろう。
レモンを抱いた時、ゴムはいらないと無理矢理制止された。
性に奔放な女なのかと思えば、前戯への反応は初々しいし、挿入時処女特有の感触があった。
「お前、何で……」
「子供が出来ない体質なの。でも抱いて欲しかった。あなたにだけは、私を女として扱って欲しかった」
どこか厭世的な雰囲気を持つ彼女が、初めて寂しそうに見えた。
「子供が出来ない……もしかしてお前の研究はそのために……」
「ふふ、それだけでもないけれどね。ありがとう、アクセル。私の初めてと最後を貰ってくれて」
最後、だと?
「まさか一回きりにするつもりか?」
「なりゆきで私を抱いただけでしょう?」
「なりゆきだけでは抱けない。お前がいいのなら何度でも抱くさ、これがな」
デートに行った時、レモンはおれに銀のペンダントをくれ、おれはレモンにピアスを渡した。
「平和、ね」
蜂起の計画は着々と進んでいる。
「今更後悔か?」
「いいえ、ただ……別の研究をしてみたくなったの」
人造人間――レモンにとっては息子や娘――の研究だけだと思っていたが。
「名付けて『W00』今研究しているWシリーズは融通が効かないから、極めて人間に近い子を作ろうと思うの」
「それは本当に永遠の闘争のためか?」
「勿論。だってその子はWシリーズ……限りなく人間から遠い。近い部分があるだけ、余計にね」
何故かレモンは自分の腹を撫でた。
勿論中で命が育っているはずもない。
「その子が人間として生きていけるとすれば、その世界はきっとあらゆるものを受け入れる『無限の開拓地』なのでしょうね……」
おれは腹を撫でる手を握った。
「だが闘争と受容は相いれない」
「わかっている。感傷なのよ、結局。それで、あなたにも協力してもらいたいの」
――W00は男性型として誕生するから、おれの遺伝子を元にしたい。
素体が出来上がった時、おれは呼ばれた。
赤子同然の姿。
「これから成長するのよ」
「おれとお前の子ということになるな」
おれの遺伝子とレモンのエゴを受け継いだW00は、真っ当な性格には育たないだろう。
だが戦争だ。それくらいの方が調度いい。
「さあ、レモン。ヴィンデルがそろそろお冠だ。量産型Wも含め本来の目的を忘れるなよ」
「ええ、私たちの理想――――永遠の闘争のために」
スパロボワンライ。お題は「EnemyPhase」(敵キャラ限定)
色々候補があり迷いましたが、書けそうで書けなかった好きカプ・アクレモで。
どこかでレモン様が生きて隊長と添い遂げる世界が欲しかった……