■HappyBirthday!?

今日は配管工であり世界に羽ばたくスーパーヒーローであり素晴らしい医者であり……まあとにかく凄い人で、そしてボクの兄さんでもあるマリオの誕生日だ。
マリオは本当に凄いから弟であるボクも鼻が高い。
それだけ凄くても、背とジャンプ力はボクの方があるし家事能力は格段にボクの方が上だけどね。
キノコ城では国をあげたパーティーが行われる。ボクは今その準備のお手伝い中。
外にいろといわれたので庭の掃除をしているとまだ時間じゃないのに色々な人がやってくる。

「こんにちは、ルイージ。誕生日おめでとう」
声をかけてきたのはサムスさん。
宇宙船とパワードスーツで銀河を駆ける凄腕のハンター。
ドレスだけど華美じゃなくて動きやすそうなのは流石ってところかな?
「ところでこんな所で何をしているの?」
「庭の掃除だよ。マリオのお祝いに来てくれた人が気持ちよくなるように」
「…………ルイージ、私の記憶違いなら申し訳ないけど」
彼女が何かを言いかけていたけど案内役のキノピオがこっちに走って来たのでさえぎられてしまった。
何かを小声で話し合っていたけど人の話を盗み聞きするのはよくないよね。
キノピオにうなずいてこちらに振り向いた彼女は何か曖昧な笑みを浮かべていた。
「……ああ、何でもない。気にしたならごめんなさい。それではまた後で」
気になるってば。
まあ滅多にサムスさんの笑顔なんて見れないだろうしそれでいいことにしちゃおうかな。

こんな世界だからお客さんは人間だけじゃない。
庭木の剪定をしていたらボクの服を引くものが。
振り向いたら誰もいない…………背中だけが重い。
ま、まさかオバケ!? 縁起でもない縁起でもない!
ボクは何かそういうの呼びやすいみたいだけど何もこんなめでたい日に出てこなくてもいいじゃないかぁぁぁぁぁ!!
「ぷ~~~~!!」
パニックになりかけた僕をはたいたのはピンクのまるいふわふわ……ポケモンのプリンだ。
どうやらボクのオーバーオールの背にぶらさがっていたらしい。
気付いてもらえなくて彼女はご立腹のようだ。物凄く膨れている。
同じピンク玉でもカービィよりはマシかもしれないけど。
彼――そう、多分男の子のはず――を怒らせたら、思いっきり吸い込まれていただろうから。
とにかく頭を下げて謝るとプリンはようやく機嫌を直してくれたみたいだ。
「ぷい~、ぷりぷり~!」
ぴょんぴょん、というよりもぽんぽん撥ねながらプリンはボクに何かを伝えようとしている。
……うん、可愛いと思うけど何が言いたいのか全然わからない。
まあ笑っているようだし多分お祝いを言っているんだろう。
ボクがありがとうと言うとたいそうご機嫌なようだった。
「ぷゆ~~い!!」
満面の笑みのプリンが取り出したのは……マイク。
ちょっと踊ってみせて物凄く得意げにしている。
だ、だめじゃないか! 皆寝ちゃうよ!
…………全然聞いてくれない。こんな時マリオだったら言うこと聞かせられるんだろうか?
その上膨れて今にも往復ビンタしそうだし……もうイヤ。
「ぷ~!」
「あ、あのね、プリン……」
「ぷ~~り~~!?」
「ピカー」
て、天の助けだ! ピカチュウが割って入ってくれたぞ!
野の花をそのまま集めたらしい花束を抱えたままプリンと話をしている。多分あれがプレゼントなんだろうな。
「ぷ~、ぷいぷい!」
「ペカー、チュッピカチュ」
「ぷゆ~」
……やっぱり何言ってるかわからない。結構付き合い長いはずなんだけどなぁ。
そんなわけでどういった会話があったかは知らないけどプリンはマイクをしまってくれた。
ボクはピカチュウに感謝して頭を撫でてあげた。
物凄く痺れたのでちょっと後悔…………

お客さんはまだまだやってくる。
リンク――今日は子供の方みたいだ――が自分で狩ったというウサギを食材として持ってきたり、
フォックスがどこの星のだかわからない微妙なセンスのおみやげを持ってきたり、
オリマーとかいう小さい人が赤だの青だのとにかくわらわらいる生き物を引き連れてきたり。
あっけに取られてるとまた何か裾を引っ張られた。
足元を見ると、銀色のロボットが僕を見上げている。10cmくらいかな? つぶらな瞳で物凄く愛らしい。
裾から出ている糸をつまんでみせて、プチっとそれを取ってくれた。
「……あ、ありがとう」
「ルイージさんから10ハッピーゲットです!」
騒いでいるのはちっちゃなテレビのようなロボット…………何なんだろうこのコンビ?
「この調子で行きますよちびロボさん! パーティーで皆さんをハッピーハッピーです!」
頭から取り出した花をボクに手渡すとおしりのプラグを抱えて走っていった。
うーん、よくわからないけどボクが知らないうちにまた仲間が増えてるんだなぁ。
顔覚えるの苦手だから心配だよ。

「ルイージさん、そろそろ準備を……」

いよいよだ。
ボクの最高の兄、マリオが皆から祝福される時。
恥ずかしくないようにボクもおめかししなきゃ。
へへ、久しぶりだからちょっと手間取っちゃうや。でも急がないと。

「ルイージ、もう準備出来たのか?」
ワオ! マリオ、ボクはまだ着替え中だよ!
それに主役は先にスタンバってなきゃダメじゃないか!
「お前が来なきゃ始まらないだろ。早くしろよ」
呆れながらもちゃんと待っててくれている。
マリオはやっぱり優しい。主役なんだからボクを待つ必要なんてなかったのに。
「行くぞ、ルイージ!」
「うん、わかったよマリオ!」
二人そろって……ボクは二歩下がってマリオに付き従う形で会場に入る。

「マリオ、ルイージ、誕生日おめでとう!」

……へ? ボクも?
ピーチ姫が祝辞を述べているがボクの頭には入らない。
だってこれはマリオの誕生日であって、ボクは……
「お前はボクの双子の弟だろ。忘れたのか?」
マリオがささやく。ニヤニヤしながら。
…………忘れてたよ。あまりにもマリオが眩しくて、双子だってこと、すっかり忘れてた。
「本当はもっと前に言ってやるべきだったんだろうが……あまりにも熱心に準備をするものだから声を掛けづらくてな」
「だって……マリオの誕生日だっていうから一生懸命に……!」
サムスさんがチラシを渡す。そこには確かにマリオブラザーズ誕生会と書いてあった。
「最初からあなたたち二人の誕生会だったのだけれどね。あなたが勘違いしていただけ」
そ、そんなぁ……
「確かにキノピオたちには口止めさせていただきましたが……これもひとつのサプライズ、ですわ」
看板を持ったキノピオたちがぞろぞろと出てきた。
「不満があるならピーチ姫特製のこのバースデーケーキはボク一人で食べちゃうからね」
そりゃないよ兄さん!
確かに嬉しかったけど……けど……!
「今度からこういう意地悪はなしだからね!」
「気付かないほうも気付かないほうだけどな」
「ぷりーーーーーーーーーーーー!!」
会場に突如響いた高く幼い声。
間違いない。あの子だ。
プリンがステージの上のテーブルのさらに上に乗ってマイクを構えている。
どうやらプリンにはここがコンサート会場、ボクたちはお客に見えるらしい。
その意味を理解できるものは総出で止めようとするが――一歩遅かった。
甘く美しい旋律が響き渡る……ああ、ボクも眠く――――

目が覚めた時には彼女は消えていて食べ物はかなりの量が減っていた。
「ルイージ、ヒゲが増えていますわ」
ピーチ姫に鏡を借りてみると口の周りが黒く塗りつぶされていた。これじゃあ山賊だ。
かく言うマリオもヒゲが結ばれていた。
……これさえなければ可愛いのに。
「え~、皆さん、先程の余興はいかがだったでしょうか。気を取り直してパーティーを楽しんでください」
そしてボクらは沢山のプレゼントをもらった。
何故かボクへのプレゼントは日用品が多いのかは気にしないことにした。マリオはそうでもないのに。
明日からはまた大乱闘だ。もっと食べて英気を養わないとね。

 

スマブラ部屋が出来る前に書きました。
マリオ20周年の時に思いついたネタだったんですが、書き上げたのは恐ろしく後。
オールキャラ、のつもりがかなり偏りました。
非参戦作品ネタが多いのはいつものことです。ピクミンは参戦しちゃいましたねー。
あと記念Tシャツでソニック君がマリオ帽被ってたから出そうと思ったけどボツったんですが、まさか本当に出るとは。

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