■超音速の乱闘者
「本日のF-ZEROグランプリの舞台はお馴染みミュートシティ! しかも、大乱闘スマッシュブラザーズとの共同開催です!」
ミュートシティの青空にF-ZEROの名物実況司会者ミスター・ゼロの声が高く響く。
「そちらはフォックスとミスター・ゲーム&ウォッチ、ルイージとネスのタッグバトル! しかしあちらも大乱闘ならこちらも大乱闘だぁっ! このビッグレースを制するのは誰だ! 今回の注目は……」
「へっ、人の頭の上でのんきに戦いやがって」
ジャックが毒づく。
「人の庭に土足で乗り込んできたくせに、障害物くらいにしか思ってねぇ」
「ジャック、敵を見誤らないで。私たちの目的は」
「レースに勝つこと、だろ? わかってるって。乱闘野郎どもに構ってられるかよ」
ジョディの警告に軽い調子で、しかし表情は真剣に答える。
「それに皆いい人だと思いますよ。F-ZERO自体に悪意がある訳じゃないはずです」
「まあ、な。けどここに来たからには話は別だ。引き立て役になんざなってやらねぇ」
「ああ。相手が誰だろうが容赦なくブッチ切ってやるぜ!」
それがF-ZEROの、そして乱闘の、いや、戦場の。
何より、自分自身の掟。
「あ、来ましたよ、ブルーファルコン」
ルーシーの言葉通り、ナンバー07の青いマシンがポジションについた。
「来ると思ってたぜ。今日の乱闘にあんたは出場してないからな。勝負だ、キャプテン・ファルコン!!」
「俺を忘れちゃ困るね。主役はこの俺、ジャック・レビン様だ。やぁってやるぜ!」
「私も負けていられません!」
「……大丈夫かしら」
ジョディが思わずため息をつく。
ファルコンの口元にはいつもの不敵な笑みが浮かんでいた。
カウント、そしてシグナル。
――――――スタート。
「いっっくぜええぇぇぇぇ!!」
ここでの乱闘は高速でコース上を移動する足場で行われる。
踏み外せば路面から弾かれてしまうほどの速さ。
その下を更に高速で駆け抜けるF-ZEROマシン。
彼らと接触すれば大ダメージは必至。
そして彼らはただ走るのではなく、敵を潰すことも重視にしている。
レースの結果の如何を問わずどれだけ倒せたかだけを考えるような者もいるほどだ。
謂わば、上でも下でも音速を越えた大乱闘が繰り広げられている。
そして一番の見所は、その2つが交差する瞬間。
「…………わざと、じゃないんだよね……ボクが地味だから見えなかっただけで……」
「そういじけるなよ。彼らにも止まっているものは凄い速さで過ぎていくんだし、それがルールだ」
「足場ハ彼ラガ勝負ヲ仕掛ケルたいみんぐデ降リルコトニナッテイマスカラ、ソノ点デハ意図ガアリマスケド、彼ラ自身ニ悪意ハナイハズデス」
「まあ楽しいけど、クラッシュしたマシンが突っ込んでくるのはともかく、2機同時にブーストファイアーは……」
「……ないよねぇ。皆吹っ飛んじゃったよ」
「ファルコンはともかく、リュウはわざとってことはないんじゃないか?」
「デスネ」
「だね」
「うん……って、何気にファルコンさんに凄く失礼だよそれ! 納得しておいて何だけど!」
「俺も冗談のつもりだったんだが……」
「マア、ココデヤッタラ観客ガ喜ブ、ッテ程度デスヨ」
「でも…………“やくもの”にもならないのかな、ぼくたちは」
「ブラックシャドーあたりなら潰しにきてくれるけど、そっちが好みか?」
『F-ZEROグランプリ ミュートシティ』ステージがモデル。やくもの裏事情。
奴らがあんな大人しく走ってくれるワケねぇと思ったのでこうなりました。次々にブースト全開で突っ込んでくるとかもあります。
乱闘の方々に対しては眼中にないor積極的に潰しにくるかのどちらかしかない極端な方々。そして皆「自分が主役!」
ファルコンやリュウもレース中では例外ではなく。というか彼らの場合はかなり2人の世界になっています。
そしてたまにキレてマシン壊しにかかるスマブラの皆様。仲いいなお前ら。