■無垢なる黒
ぼくには、アムリタというご主人様がいる。
アムリタはいつも寂しそうににしている。
ぼくが生まれる前はぼくのお母さんといたけど、ぼくが生まれた時に死んでしまったらしい。
多分アムリタはぼくにしてくれるのと同じように、お母さんも大事にしていたんだと思う。
だからぼくのお母さんがいなくなってさみしいんだ。
ぼくはお母さんを知らないし、お母さんが何で死んだのかわからない。
だけど、お母さんが生きていればいいと思う。
アムリタが大事にしていたんだから、きっといい竜だとおもう。
でもアムリタを哀しませているから、少し悪い竜かもしれない。
アムリタはいつも哀しい眼をしている。
ぼくはその原因を知っている。
ギルドとかいう奴らが、アムリタをいじめているんだ。
アムリタは何も悪いことをしていないのに、皆でアムリタを苦しめている。
アムリタは優しいから哀しい眼をするだけだけど、
なんにも知らないアムリタの友達までだましていると知ったとき、アムリタは怒った。
許さないって、言っていた。
ぼくもギルドの奴らを許さない。
アムリタを苦しめる奴は絶対に許さない。
いなくなって、しまえばいい。
アムリタはいつも優しい。
ぼくに笛の音をきかせてくれる。
アムリタの笛はやわらかくて温かい。
ぼくがケガをした時は、かすり傷でもしっかり手当てしてくれる。
おいしい木の実やゼリーもくれる。
そしてぼくはアムリタが大好きだから、ちゃんとお返しをする。
まものが出てきたらぼくはアムリタを守るし、ルピーとかいうかたい石とか、アムリタの装備、それにお弁当も取ってくる。
だけどそういう時のアムリタはとても怖い顔をする。
多分おなかがいっぱいなのに、ぼくがとってきたからだと思う。
アムリタ、泣いているの?
またギルドのやつらがいじめるの?
だいじょうぶ。
あいつらは皆ぼくがやっつけたから。
だから、笛の音をきかせて。
少し、苦しいんだ。
でもアムリタの苦しみに比べれば、何てことないから。
笛の音をきかせてくれれば、それでだいじょうぶだから。
アムリタ、どこにいるの?
ひとりぼっちは、怖いよ。
探しに行きたいけど、起きられないんだ。
とても苦しいから。
助けて、アムリタ。
アムリタの笛をきかせて。
暗くて何も見えないんだ。
でも笛を吹いてくれれば、それでアムリタがいるのがわかるから。
ありがとう。
きこえたよ、アムリタ。
ぼくのそばにいるんだよね?
でも少し調子外れだよ。
体の具合でも悪いのかな。
でも大丈夫だよ。もう誰もいるはずが、ないんだから。
アムリタを、いじめる奴らも。
だけど調子外れでもやっぱりアムリタの笛だよね。
やわらかくてあたたかくて、とても優しい。
もう、苦しくないよ。
アムリタがそばにいるから。
安心したら眠くなってきちゃった。
休んでもいいんだよね?
おやすみ……
アム……リ…………タ………………
子育てRPG「サンサーラ・ナーガ2」からアムリタの竜の独白。ぽえみぃ。
カオスドラゴンに寄生はされていたけれど、アムリタ想いのいい竜だったと思うのです。
あと正直GBAリメイクの1×2はあんまりいい出来じゃなかったと思うのです。特にこのラストバトルが改変されたのが。
アムリタの竜もだけど、首を1つ倒す度に少しずつ真実を語る主人公の竜の語りが変わったのも。