トリックツアー・スターライト
「ハロウィン!? オバケはやだよ!」
ルイージが尻込みするが、それ以外の満場一致で今回のツアーはハロウィンがテーマに決まった。
「誰かプロデュースしたい人はいるかい?」
「ママ! ママがいい!」
マリオがいつもどおりに議事進行係を務めるとチコが飛び出した。
「あら、いいわね。ミステリアスビューティー、ロゼッタの本領発揮!」
「み、みすてりあすびゅーてぃー?」
ピーチが頷くと皆の視線がロゼッタに注がれ、困惑する。
「ママ、お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ!」
「後でコンペイトウをあげるわ……皆様がそう仰るなら、謹んでその役割を承ります」
ツアーのプロデュースと言ってもやることは誰に各カップを割り振るかとその順番、そして目玉になるカートの準備だ。
「えーっと、例のマンションとその後とても明るい所で!」
その場でツアーのトップを飾るルイージカップの責任者を任せたが、当の本人はあまり考えたくないようだった。
ロゼッタは魔法の専門家だがそれで驚かせつつエンターテイメント性を持たせるとなると、ピーチたちにはまだ劣る。
怖がりの彼ならアドバイザーに向いているだろうと考えたが、事はそううまくは行かない。
「んもう、ロゼッタってば、そうじゃないでしょ?」
デイジーがニシシと笑って耳打ちする。
「イタズラの天才、心当たりあるでしょ?」
「そ、それは……!」
思わず赤面する。この場にはいない『彼』のことを想うと自然とそうなってしまう。
「お呼ばれしてないとかいじけてるけど、今回はルイージもそうだったしあんまり気にしなくていいのにね」
「はい。マリオさんも今回のツアーから、とお呼びしたのに何故……ワルイージさんの気持ち、確かめてきます」
「そっちの気持ち!? ま、いいけど! ファイト、ロゼッタ!」
星を渡って手に入れた青い薔薇を手に、ロゼッタはワルイージの家を訪ねた。
ドアベルを鳴らすと気怠そうに『誰ですか』と返答があった。
ロゼッタが名乗ると紫の帽子と特徴的な髭がピシリと決まったワルイージが玄関を開けた。
「貴方様にご足労いただけるなんて素晴らしく甘いお菓子ですね。噂には聞いてますよ、ハロウィンカップのこと」
「ええ。ワルイージさんにも是非参加いただければと。何故先日は来られなかったのですか」
「あー、大したことじゃないんですよ。これでもオレ様は人見知りでね。ニュードンク・シティの市長さんがこの小悪党をどう思うか、などと考えてしまう訳ですよ」
ヒラヒラと手を振ってロゼッタの青い薔薇を受け取りニタリと笑う。
「見てください、この設計図を」
トリックスターと走り書きされたジャック・オー・ランタンを模したカートの絵はロゼッタに強いひらめきを与えた。
「素敵です! このカートならカイトはコウモリの……ああ、飾りもつけなきゃ! ありがとう、ワルイージさん!」
「フフ、じゃあイタズラもさせていただけますか」
唇を重ねてしばらく、放しても息が止まったまま。
「ワルイージカップの構成も考えてあるんですよ。『こわせアイテムボックス』……普段は助けになってるアレも、追いかけるとなると腹が立つでしょう?」
「確かに。流石ワルイージさんです」
「恋もそれに似て腹は立ちはしませんが駆け引きが……おっと、言い忘れてましたねェ。トリック・オア・トリート」
「……私にとっては何でも甘いですよ」
はにかむとワルイージがクラリとした――わかってはいるがどうにも刺激が強い。
「あら、あなたが噂の紫のバラの人?」
「おおっと、誤解を招く表現はやめてくれますか」
ツアーが始まってポリーンと対面したワルイージだが、恐れるまでもなく彼女は受け入れた。
「フフッ、深読みしちゃうわね。ハロウィンのイメージカラーって言ってもこうも紫染めのロゼッタを見ると」
「そりゃ関係ないですよ。あの人は一生懸命なだけ、オレ様みたいな小悪党との仲をアピールするはずもない」
「仲があるのは否定しない、と」
「市長さんは意地悪ですねェ」
「ワルイージさん、トリック・オア・トリート」
ポリーンとの論戦に割り込んだピーチが忠告する。
「ロゼッタが見ているわよ。ポリーンもいくら2人が仲良しだからってそんなイタズラ仕掛けないの」
「……市長さんは怖いですねェ」
帽子を被り直して愛しい人の所へ向かう。
――菓子を作ってきてよかった。
母親でありながら子供心を忘れていないロゼッタに、少しの癒やしを。
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インプットあると書きやすいですね!(ブランクで書けなくなってた人)
マリオカートツアーの季節イベ・ハロウィンカップ、メインがロゼッタでワルイージ実装&ツアーの割と初期に出てくるということで燃え上がって書きました!
ツアーそのものは操作感が苦手でSwitchでやらせてくれー;ですけどもこういう喜びがあるのは嬉しい!
ポリーンはオデッセイの特性もありちょっとメタなことを言うキャラに私の中ではなっていますw