■緑を追うもの

都会の中に造られた緑の一画。
開発が進んでも――だからこそ、だろうか――人は緑を忘れることは出来ない。
その1人であるミーガンは木漏れ日を楽しんでいた。
今日は鳥の鳴き声もよく聞こえる。
鳥の種類には頓着のないミーガンだが、この風景のスパイスとしては上等と思えた。
「……今日は、いい日だな」
「グランプリの優勝がなくてもか?」
独り言に何故か応答があり、振り返る。
――鳥の鳴き声がするのも当然というわけだ。
「ナイチ“ザ・スウィープマン”か……」
「ナイチでいい。呼びにくいだろうしな」
鳥を始めとする動物たちに好かれる男、ナイチ。
彼はその先祖から受け継いだ力により動植物と会話することが出来るのだという。
レースの時を除けば、彼の周囲にはいつも鳥がいる。
「気配を消して近付くとはあまり良くない趣味だな」
「それは違う。お前が私に気付かなかっただけだ」
「お前の方が先客だったということか」
鳥の歌を聞きながら、ミーガンは表情を険しくする。
「で、私が優勝できないとはどういうことだ?」
「言葉のとおりだ……勝つのは私だ」
「フン、大した自身だな。ファイアボールやファルコンmk-IIもいるのだぞ」
「自分自身に聞いてみろ……お前は彼らに勝つ気でいるだろう? それと変わらん」
突如訪れた静寂。
鳥の声が響いているので完全に無音ではないが、沈黙の幕が彼らの間に降りた。
「……お前もここが気に入っているのか?」
「ああ。造られたものとはいえ自然の息吹を感じる」
口元を歪め肩にとまった鳥に話しかける。
ミーガンにはその言語がわからないが、ナイチと鳥の声は楽しげに聞こえた。
「……お前と違って私はずっと街中で生きてきた。こんな私が緑を求めるのはおかしいだろうか?」
「それが魂の求めるものだ。それに、私も生まれた時には故郷は開発が進んでいた」
ナイチの語調は変わらない。
だが、彼に集まっていた鳥が一斉に飛び立ったことから、彼の心が冷えているのがわかる。
「先祖が自然と語らった地は、私の代には既に灰色の石に覆われていた。だから、こういう場所を見つけると安心する」
「そうか、お前もそういう感情をここに抱いていたのだな、ナイチ」
ミーガンは笑う。
飛び立った鳥もいつの間にか戻ってきて、ナイチだけでなくミーガンにも寄り添ってくる。
「気に入られたようだな」
「ありがたいことだ。だが私にはホットバイオレットという愛すべき翼がある。彼らには応えてやれんな」
「それを言うなら私のマシンはクレイジーホースだ。鳥ですらない」
緑と木漏れ日の中、F-ZEROという文明の嵐の中で生きる2人は、しばし安息を分かち合った。

Twitterの流れからぷらいべったーで書き散らしていたもの。
2014年初出ですが加筆修正一切ありません。その時の萌えを大事にしたいので。
forGBAのキャラ結構好きです。描写が絵と設定しかないので120%捏造ですが。

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