■永遠の絆

週末に、バトルタワーの前。
オレが来て、あいつも来る。
「やっほー、久しぶりだね!」
「おう! 行くぞ! 勝負だぜ!」

そして。

「何だってんだよーッ! オレ、また負けちまったのか!?」
あいつのポケモンを1体も気絶させられないまま、オレの手持ちは皆戦闘不能。
「まだまだ、ね」
おまけにこんな余裕な表情見せてくれやがって。
「へっ、お前が強くなるほどオレもオレのポケモンも強くなれるってもんさ。ポケモンに終わりなんてない!」
「そだね! じゃ、次期待しているから!」
そう言うとあいつはとっとと“そらをとぶ”で去って行った。

最初は、親父に挑戦しに行こうと思っていたけど負けて、ここで不貞腐れていた。
そこにあいつも挑戦しにきた。
オレには勝ったけどやっぱ途中で負けて、流石のあいつもちょっと落ち込んでいるみたいだった。

それから、だ。

オレもあいつも週末にバトルタワーに挑戦するようになったのは。
そしていつの間にか、挑戦抜きに2人でのバトルのためにここに来るようになっていた。
けれど、勝つのはいつもあいつだ。
強くなっているのは、あいつだけじゃないはずなのに。

ポケモンセンターで回復させて、近くの森に入って、相棒をボールから出す。
シンジ湖であいつと同時に選んだ、オレの初めてのポケモン。
「なあ、オレ、あいつに比べてお前たちへの愛情とか足りないと思うか?」
相棒は首を横に振り、オレに擦り寄ってきた。
「そう思ってくれるならいいんだけどよ。でもお前たちのせいなワケがないしな」
オレが強くなるより、ずっとずっと早くあいつが強くなっているってだけなんだ。
だから。
「行くぜ! 次に戦う時のために、特訓だ!」

あちこち飛び回って、知識を高め、力量を上げ、絆を深める。
そして、次の週末。いつも来る時間、あいつは来なかった。
土曜日が終わって、日曜日になっても。その日が暮れても。
何かあったのかと一瞬心配したが、あいつはそんなタマじゃない。
心配するだけ無駄、という気がする。

――――というか、別に約束しているワケじゃないんだよな。
何となく自然にそうなっていただけだ。
当然みたいに、思っていたけど。

「何だってんだよ……」

いつもいつも、あいつはオレの手の届かない所にいる。
半分はオレが突っ走りすぎるせいだけど、あとの半分はいくら追いついたと思っても逃げるせいだ。

「どしたの? 浮かない顔して。らしくないよ」

驚いて顔を上げると、あいつが目の前で笑っていた。
「お前! 今まで何して……!」
「ヒンバス釣りに行ってたんだー。大変だったけどようやくポイント見つけて大漁! あ、ゴメン、もしかして待ってた?」
「待ってねーよ!」
いや、思いっ切り待ってたけどさ。
もしかしたら万が一にでも本当に何かあったかもしれないとも思ったし。
「まあいいさ。強くなってるのはお前だけじゃない! それを見せてやる!」
笑ってボールを構えると、あいつもそうする。

今回は半分はどうにか出来たけど、やっぱ勝ったのはあいつだった。

「でも頑張ったね。キミもキミのポケモンも」
「勝った奴に言われても嬉しかねーよ」
ま、楽しいバトルだったけどさ。
しかし次の瞬間、あいつはとんでもないことを言い出した。
「もっと強くならないと、結婚してやらないぞ」
「はぁ!? 何だってんだよ、お前!!」
唐突にも程がある。
昔から“のうてんき”だけど、これはねーだろ。
まあオレは“うっかりや”だとか“せっかち”だってよく言われるけど。
「昔キミが言ったことだよ?」
そう言われて、何となく思い出した。
本当に本当に、ガキの頃。

――――――オレが最強のポケモンマスターになったら、結婚してやってもいいぞ。
お前がナンバー2で、最強のタッグだ。
どうせお前なんか貰ってくれるヤツ、いないだろうし――――――

「……!! バッッッカじゃねーの!? 何だってんだよ! 何でお前そんなことまだ覚えてるんだよ!」
「だって楽しみにしていたから。あの時からずっと」
「無効に決まってんだろ!」
「あ、そうなんだー。残念だな」
いつものように笑うと、ボールを構えて背を向ける。
「あたしは、ずっと待ってるから」
「待ってンなよ!」
「キミもいつも待ってるじゃない。じゃ、また次の週末にね!」
そういうとあいつは夜空に飛び去った。

――――これ、約束だよな。待ち合わせの。
でも、この約束を有効にしたらアレも有効になるんじゃねぇの?
どっちも約束なんだし。
いや、あの約束はオレが最強のポケモンマスターになる、つまりはあいつに勝つのが先なワケだけど――――

ワケがわからなくなって、オレはあいつが消えたファイトエリアの空に叫んだ。

「何だってんだよーーーッ!!」

 

ポケモンダイパから、ライバル×主人公♀。大好きなカプなんで、ようやく書けて嬉しいです。幼馴染万歳。
タイトルはダイヤモンドの宝石言葉です。
ダイパライバルといえば「何だってんだよー」で、それが大好きなのでふんだんに盛り込んでみました。
ええ、もうしつこいくらいに。
主人公は私的にはこんなイメージです。
名前はそれっぽいの考えるの&夢システム導入するのメンドかったから好きに考えてください。
ライバルは私にとってはデフォネームの中のひとつのジュン君ですが、それもまあご自由に。

 

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