■悪の中間管理職
ブラックシャドーの統率する犯罪組織、ダークミリオン。
所属する人員にはそれぞれ思惑がある。
まず、犯罪は利益がある。
社会生活に順応していたら得られない利益。
対価を払わず物を手にいれる。
人を殺す。
だからこそ社会から非難され法によって対価を己で払う――裁きを受ける。
そしてF-ZEROには社会的法律は一切関与なく、独特のルールだけがある。
過激なレースで事故があり人が死ぬのは当然で、死者が出ない方がおかしい。
期待を受けたパイロットの死は痛ましいが感動を呼ぶ。
レースの観戦は娯楽で、過激な娯楽はとても非日常的なので皆が喜ぶ。
大型レースに参加出来ることそのものが素晴らしい栄誉で、彼らの中で優勝することはこの上ない栄光で、その対価として莫大な賞金が得られる。
「いや、ヤバいだろ。このままじゃ粛清だぞ」
オクトマンは焦っている。
彼の失敗をミス・キラーに叱責され、それを匂わされた。
「そうよね。アタシの方が腕がいいし、故郷の家族に喜んでもらいたかっただけとか泣けちゃう」
「お前は人のために涙を流せる自分は美しい、だろうが」
ザ・スカルの呆れにババは怒りを見せる。
「それもあるけどオクトマンは同志よ。成果を奪われるのは悔しいけどね」
「これも呪いかもな。レースなら当然勝ちたいが……」
F-ZEROパイロットでダークミリオンの幹部である彼らにはわかる。
優勝賞金は莫大だが、勝ち取った彼らにはあまり与えられない。
高機動小隊は認めたくはないがかなりの強敵で、何もかもが割に合わない。
「金については連中も似たようなもんだけどよ、ポリ公は正義の味方様だ」
犯罪者であるダークミリオンの排除はF-ZEROとは関係なく彼らの任務だ。
高機動小隊と戦い続けた彼らは知っている。
彼らはとてもお人好しで、とりわけリュウ・スザクはなかなか致命的だ。
今まで死ななかったのが不思議なくらいだが、優秀な腕前と、何よりもその呆れられつつも好かれるお人好しぶりのおかげなのだろう。
「我々より他の連中に排除させるべきだが、下っ端はアテにならん」
そしてどう考えても彼らよりミス・キラーやブラックシャドーが相手をした方がいい。
ただし統率者が自ら現れるのは、下が見捨てられた時だ。
「高機動小隊はしぶといが、簡単に殺せてしまう人間はつまらんからな」
腹が立つが面白い。
「アタシの美を世間に見せつけて、ブラックシャドー様にも認めてもらうのよ」
なかなか困難だが、魅力的だ。
そう決心しつつも、ため息をつかずにはいられない。
「中間管理職ってつらいよな……」
なかなか悲しい、ダークミリオンの彼らだった。
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ワンドロだろうがお構いなしにワンライやる奴です。
久々のF-ZEROワンドロ参加お題『ダークミリオン』でした。
大好きなキャラは当然いるのですが、基本的に箱推しです。
そして憎めない悪役で中間管理職の彼らはとても大好きですw
ババ主役回欲しかったなぁ。