■新天地にて誓う、永遠の愛を
夢であることをまず最初に疑った。
B.B.でも夢くらいは見る。人間が生きていくのに必要な機能だ。
目の前に差し出された小箱が何であるかは、宝飾品に無縁な彼女でもわかる。
リングケース、指輪を収めた箱だ。
クソ、という接頭語を付けたくなるくらい真面目な後輩が彼女をからかうためにそれを差し出したと考えるよりは、夢だと考えた方がまだ自然だった。
「キツイの一発ぶちかましてくれ」
「夢じゃないです、イリーナ中尉」
真剣な面持ちのままゆっくりと箱を開くと、煌めきが彼女を刺す。
「中尉が良ければ、なんですがこれを指に嵌めて欲しいんです。自分とお揃いです」
「バッ、自分が何言ってるかわかってんのか!」
真赤になって捲くし立てる。
「誰の入れ知恵だ! そういえばこないだエルマチームのあいつと話し込んでたな!」
「ええ、まあ、相談に乗ってもらいました」
「馬鹿! アイツは地球の記憶がないんだ! 指輪の意味も知らない、だから気軽にお前に……!」
「でも自分には地球の記憶があります」
真っ直ぐな目で言い切られると、言葉に詰まる。
「指輪の意味もちゃんとわかっています。勿論からかう気もありません」
「う、う……」
嘘だ、と言いたかった。
しかし躊躇する。それを決めるのは彼女ではない、彼だ。
実直な彼が、他でもない彼女に、こんな洒落にならない嘘や冗談を言うものだろうか。
「結婚してください。俺はあなたと、このミラの大地で、上司と部下というだけでなく、伴侶として生きていきたいんです」
決定的な一言を放った。
彼女は無言だった。
無言のまま、瞳を潤ませていた。
「あ、いや、その、中尉が嫌だったらハッキリ断ってください。そんなこと言ってる場合か、ってぶん殴ってください! さあさあ!」
「……私は、嫌だなんて言っていない」
リングケースを手に取る。
「サイズ、わかっているかい? 合わなかったら許さないよ」
「そりゃあまあ中尉の装備を調達するのも普段の俺の役目ですから」
夕日にかざして反射を楽しむ。
「気に入らないことあったらぶっ飛ばすし、料理も……その、あまり上手くない」
「殴られ慣れてますし胃薬はダース単位で買ってあります」
「…………グイン」
彼が問い返す前に抱き締められた。
「馬鹿、馬鹿野郎……! 私をこんなに喜ばせて、ズルいだろう!」
「じ、自分には今の状況が一番喜ばしく……! 絶対、もっと、幸せにします!」
輝きを互いの薬指に嵌めて、唇を交わす。
ミラの夕日が、1つの影を長く伸ばした。
グインのキズナトークでイリーナ中尉への誕生日何がいいかで「指輪逝け」という選択肢がありあろうことかノリノリだったグイン君のその後。
アメリカではペアリング珍しくないのかなーと思ったら「むしろペアリング=結婚指輪」という結論をGoogle先生が出してくれたので、
畜生グイイリ末永く爆発しろと思いながら書いた小説です。もう1つ推してたイエエレはキズナクエラストで叩き折られましたし。