切望の花、被せ舞う
異界とは、if。
ひとつの選択が世界を大きく変え、異界が生まれる。
複数の選択が交差すれば、たとえ扉を閉じたとしてもその先で別の異界が生まれ、再び扉は現れる。
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『愛の祭』
古の時代、アスク王国に現れた召喚師が伝えたとされる行事。
人々は贈り物を携え、親しい人に感謝を託しあい、時に秘めた想いを告げる。
その行事はアスクが開いた扉より異界に伝わり、英雄たちが闘技大会で力を示すことが愛の証明である、という『愛の祭の異界』が生じた。
この異界への扉を開くことが可能なのは『開く力』の神竜アスクの祝福、そして古の召喚師の伝えた『愛の祭』と星巡りが一致する時。
今年は『覚醒の異界』と『愛の祭の異界』が交差したようだった。
灰色の荒野、草木の枯れ果てた、邪竜の蹂躙により希望を失い滅亡を待つばかりの未来。世界、そして両親を救うために神竜ナーガの力と『炎の紋章』を用いて過去へ跳躍した子供たちは、浮き足立っていた。
『愛の祭』で最も一般的な贈物は『花束』だ。
そして伴侶としての愛、恋愛と同等かそれ以上に『家族愛』を示すことを好まれる。
時間遡行を行った彼らにとって、本当の両親は自分や世界のために死んだ英雄だ。
まだ若々しい姿で生きている両親、そして自分とはよく似ているが、やはり違う存在である子供が生まれる彼らには複雑な想いがある。
――とはいえ、その胸中に抱えた想いを極大化させてしまうのがこの異界だ。
「愛と花の戦士として相応しい特別な衣装、感謝に彩られた武器……! 闘技大会の優勝は貰ったぜ!」
ウードの英雄の血が疼く。隣には最も強い英雄の片翼である母親がいる。
「チーム戦で良かったね、ウード! 治療は任せて!」
「ああ! 召喚師に強大な祝福を受けた、って……」
眼を丸くして部隊編成表を見る――ヴァイス・ブレイブに所属する多様な英雄から技能を伝授するのも、召喚師とその神器ブレイザブリクの力のひとつだが。
(前略)護り手・遠間(以下略)
「母さんに何やらせるんですかエクラさん! 俺の故郷で何があったか知らない訳ないでしょう!?」
いつもの調子が飛び、素に戻ったウードが泣き叫び召喚師を問い詰める。
「うん。だからリズが重装で来たのって『そういうこと』かなって」
「人の心がないんですか!?」
悪ぶれもせず『彼の両親がどのように死んだか』を現在の自警団の飛び跳ねシスターでありまだ幼い少女のリズに再現させようとした、と宣言した召喚師。
この召喚師には、英雄たちの『元の世界での活躍や因縁』を知り尊重するせいか、時に大局を無視して暴走する悪癖があった。
当然、惨劇を繰り返さない方向にその情熱が走ることの方が多いのだが『リズの意志を尊重するとそうなる』と主張する――実際、その力を持ったリズは攻撃は全部弾くと張り切っている。
「なるほど、そういう策があるのですね」
「勉強になるね」
「ルフレさんたち!?」
悲鳴を上げる。彼らも『愛の祭』の装束を身にまとい闘技大会に出場するが、ウードにとって最早勝敗は二の次である。
「ですがウード、護る力が授けられたのなら、それを行ってしまうものだと思いますよ。ウードだって、皆も、そうしたいから過去に遡ったのですし」
従姉であるルキナが宥める。やはり闘技大会に出場する彼女は、召喚師が手を加えるまでもなく『護り手』の力を行使できる。
「この力がある以上、闘技大会では、ウードからのお父様とルフレさんへの攻撃は絶対に通しません!」
「武器相性とかなりギリギリの速さ勝負!? あとクロムさんとルフレさんの
「ん? これは『愛の祭』の異界で造られた、絆を示す祭器だそうだ」
「人々の祈りと力が込められてる、という意味では神器、と呼べるかもしれないね」
――勝ち目が見えない。
当然のように重装特効。
奥義が出やすい上に、後衛のルフレの策として周囲にもその効果を発揮出来る。
ルキナが組んでいる場合、敵の強化もその『瞳』で無効化される。
覆し難い天賦の才と相性と与えられた武器の差。
召喚師は喜々として特務機関に所属する英雄たちにウードに対する教練を依頼していたが、少なくともこの『愛の祭』の闘技大会のためでないのは明らかであった。
その闘技大会の結果については、この特務機関の記録としては本筋ではないため、省略する。
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この『愛の祭』を謳歌するのは、特別な装束と力を与えられた彼らだけではない。花束や贈物を携え、それぞれに感謝を伝えようとする。
「どうしようかしら。特務機関には母さんが何人もいるから大変だわ……」
言葉とは裏腹にノワールの頬は綻んでいる。
呪術師としてのサーリャ。冬祭で『普通の女の子』を演じるサーリャ。花嫁姿で燃え盛る呪華のブーケを携えたサーリャ。ペレジアに伝わる祭りの案内役をするサーリャ。
どのような姿であろうと、ノワールにとっては代え難い――少し恐ろしい点も含めて愛する母親だ。
彼女が生まれ育った、絶望に沈んだイーリスとは全く違う海を楽しむ姿で召喚されたノワールは、やはり故郷とは違い、花と希望に溢れるこの祭で母親ひとりひとりに合わせた贈物を選び手紙を書く。感謝を伝える祭とあって、行商の用意する便箋は豊富だった。
「愛は呪い……感謝は呪い。その本質、想いがあるなら形は……母さんがよく言っていたわ。でもそれぞれの母さんに一番似合う物が思いつかない……」
特殊で贅沢な悩みだ――母親が多すぎてどれだけ贈っても足りない気がする。
そもそも、生きているだけで嬉しいのだ。
彼女自身も含めて、季節の祭を楽しむ姿で召喚される英雄は多い。
『特務機関の英雄は可能性と希望の最大公約の姿であり、元よりそのような楽しみがなかった彼らの召喚は、ありえない希望を楽しむ性質が強くなる』といった仮説を図書館に集まる研究家たちが論じていたのをノワールも聞いたことがあるが、サーリャが望む姿、望まれる姿の結実が今の多人数、というのは少し興味があった。
しかし目下の悩みとしては、とにかく手が足りない。
そして呪術が身を削ることから弓を持たせられたのはノワールの本質のひとつだが、彼女が別の英雄として召喚されるなら呪術師にもなるのだろうか、とも想いを馳せてしまう。
そして『伝えたい想いの本質』は手紙だが、やはり贈物にも拘りたい。
手紙を書き終えて『愛の祭』の異界をまわる。路商の客引きも多くいる。
その中に異なる装束のアンナも何人もいた。
花。食材。そしてノワールがこの異界で浮かないための衣装を探す。
「あ、いたいた! 別に探してなんかいないけど、どこ行っていたのよ、ノワール!」
「相変わらずそういう接頭詞つけなきゃ気がすまないなあ、セレナは。どう? 春のお茶しない?」
セレナとアズールに声をかけられる――彼らは『春の収穫祭の異界』を経て特務機関に来た。
主張の強いうさぎの飾りはともかく、季節が近いためかそこまで浮いた姿ではない。
「あんたこそそれ付けなきゃ女の子に声かけられないワケ!?」
「出来ないよ恥ずかしいからね!」
「黙れ! 我を探していたのではないのか!」
それぞれの悪癖の発露、特にノワールの意志とは別に発現する『呪い』に彼女自身が弱気に謝りつつ、話題は転換する。
この呪いが発現する以上、強気に出なければならない場面だという事実と認識が確固としてあることが露呈するのもまた悩みの種だが。
「ルキナとウードが闘技大会の報酬を分けてくれるんだってさ」
「まあ元々私たちの代表として出てもらったから当然だけど? あのふたりのいい子ちゃんにも困ったものねー」
招かれた倉庫には多種多彩多様の花、あらゆる異界から集められたと見紛うばかりの贈答品の数々が並べてあった。
少しルキナの感性に寄った物が多く、彼女自身が買い揃え、或いは活躍の報酬として受け取ったものを分配した経緯を想起させる。
「わあ! 目移りしちゃうわ」
感嘆しつつ、この二人だけでなく、ルキナも『春の収穫祭の異界』の姿で召喚された別の存在がいたことを思い返す。
似合うかはわからないが、水着よりはこの場に相応しいのではないかと考える――幸い、次の祭の準備ということなのか、仮装の中でも殊更に種類が豊富だった。
「ぴょ……ぴょーん!」
アンナに仕上げを頼み、鬼気迫る表情で『この装束でのお約束』を叫び友人たちの前に現れる。
「フッ……春の豊穣の担い手よ、約束されし感謝の結実は果たされた!」
「何故いるのだ貴様ぁ!!」
セレナとアズールに合わせる、という意味も強く2人に見せるつもりだったのだが、真っ先に賛辞を述べたウードだけでなく、ブレディやジェローム、ンンにシャンブレー、シンシア、デジェル、そしてマーク――と勢揃いである。強いて言うのなら、特務機関に合流出来ていないロランはいない。
「もちろん、感謝の策を最大に発揮するためです!」
「知恵を寄せ合い、軍議をすべきだと!」
「……ノワールが聞いてるのそういうことじゃねーと思うぞ、マーク……まあ俺らも感謝とかちゃんと形にするなら、それらしい物選びたいし、俺たち同士で渡し合う、っていうのも必要だしな」
「極めて馬鹿馬鹿しいが、士気の上でこういった行事が時に必要である、ということには同意する」
「……ンンは何も見ていないのです」
「それは優しさにはならないわ」
「もー! 一緒にうさぎの姿でぴょーん!する方が絶対楽しいしヒーローっぽいよ! おカタいなあ!」
「俺、元々タグエルなんだけど……仮装したら母ちゃんに怒られないかな!? 怖くて絶滅しちまう!」
「僕の場合舞踏祭に立てたのは誇りだけど、皆余裕だなあ。皆迫真の表情でぴょーん!すればいいんだ」
「……平易に言い直そう。春らしい姿で感謝を示すのには丁度良く何より」
「黙れ黙れ! 貴様らは口が先に出過ぎるのだ!」
仮装姿で勢いのままに飛び出す――後悔するのはわかっているが、状況があまりにも過酷であった。
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「……キレたくないなあ。母さんの考える普通の女の子、になれたらいいのになあ」
ひとり呟きそれを想像すると、また『呪い』が発動し『こんなものは我ではない!』という思考が挟まり、冷静になったノワールが確かにそうなのだけど、と分析する。
「あら、ノワール。あなたも春の収穫祭の闘技大会に出るの?」
その声を聞き違えるはずがない。
「母さん!?」
「あらあら。ダブルの相手は私じゃなかった方が良かったかしら」
傍らで笑うのは『共鳴の異界』の魔道士、ソニアだ。
研究熱心かつ姉想いである彼女は、多少の可能性の分断・歴史の分岐があるにしても、地理的な繋がりが明確に見られる『紋章の異界』や『覚醒の異界』の魔道に重要な手掛かりを求めているらしい。
それと同時に彼女が『春の収穫祭』の闘技大会に出場するにあたり、同様に仮装が似合いそうだ、という理由もあってサーリャに目を付けたようだが。
「い、いえ! これは闘技大会の衣装ではなく……水着のままだと、この異界だと浮いてしまうから」
「そうなの? ちょっと残念。でも良かったじゃない。娘が生まれてあなたを愛してくれる、その未来は約束されているのでしょう? 心配する必要はなかったかもしれないわね」
微笑むソニアは『共鳴の異界』では明確に悪意を伴って呼ばれる『妖艶な魔女』の笑みではなく、どこか子供じみた柔らかで、確かに喜びの共有をもった声色で告げた。
「……そうね。ノワールは私の大切な娘。でもそれはあの人に向ける感情とは違う……ノワール、誤解しないようにね。悪い意味ではないわ。あの日から離れない身を焦がす憧れと、いつかあなたを産み育て守るという決意は、似ているけど違うの」
「ええ。大丈夫よ、母さん。私がどんな母さんでも絶対にこの気持ちは伝えたい、って思うのと同じ」
その花は何の変哲もないカーネーション。
『愛の祭』の闘技大会で使われる武器の装飾にするには届かない――魔力を込めれば散ってしまう、しかし色鮮やかで生命力に溢れた花束だった。
「いつもありがとう。私を願ってくれて、ありがとう。日陰にいる母さんも大好きよ。でも、春の収穫祭の主役は、絶対に母さんとソニアさんだわ。凄く似合っているもの」
言葉を紡ぎながらも不意に涙が溢れる。どれだけの感謝を言葉にしても足りない――届かない。
『愛の祭』を喜ぶ者の気持ちは皆同じだ。
この祭の存在は口実に過ぎず、伝えきれず抱えきれない感謝と愛を一片でも言葉にするために、星の巡りと共にこの祭りは行われる。
「……私の娘だけあって呪いが得意なのね。目立たない訳にはいかなくなったじゃない」
紅潮した頬を背けた先にソニアの笑みがあり、また背ける。
ぶつけたくなった呪詛や怨嗟はそれを念ずるまでもなく返ってくると理解している。
「ふふ、じゃあ『春の収穫祭』でお母さんは借りるわね。あなたも『愛の祭』を楽しんでね。知っているでしょう? 勿論一番尊ばれるのは『家族愛』だけれど……」
「それ以上は呪うわよ……ノワールを唆す呪いは、どんな相手でも私の呪いを受ける覚悟をしてもらわないと……」
「あっれれ~、ノワールも参加するんだぁ。ちょうど良かった。僕に弓を教えてほしいなぁ」
不意に声をかけたのは『春の収穫祭』の仮装をしたヘンリーだった――気配も魔力も感じさせず彼女たちを傍観し、そして気まぐれに声をかける。
「えっ、その……」
「元の世界でも一緒に行動していたんだよね~? 少しでも知っている方が呪いはかけやすいし、僕が弓をちゃんと使える呪いをかけてもらうのにも役立つよね~」
へらへらと笑う――彼はどの
純粋であり痛みを知るからこそ強力な呪いを操り、気の向くままに自分が好きか嫌いかで動く。
彼が好む相手が痛みや呪いを好まないのなら行使しない、といった彼なりの規範はある。
だが、サーリャとノワールにとっては彼の存在は意味合いが異なる。
あらゆる『覚醒の異界』から英雄として抽出された彼女たちにとって、ノワールの父親、サーリャの結ばれる相手は様々な
それはノワールに限らない。
『覚醒の異界』にも限らない。
アスクが扉を開き、召喚される英雄に伴う宿命である。
例外に含まれる恋人たちは、可能性が生じる余地すらないもの、世界の運命とも呼べるものに近い。
強いて言うのであれば、サーリャとノワールのような親子関係もまた必然的なものだ。
逆に言えば、ふたりにとってヘンリーは『その可能性』に目を向けざるを得ない相手のひとりだ。
「ほーら。元々の知り合いの人でも、他に弓の名手、いっぱいいるでしょう?」
緊迫した空気を払わんと、軽くソニアが声をかける。
「えー。その中だとノワールが面白いと思うんだけどなあ」
「エリーに憑いているミラージュのヴィオールはどうかしら。知っているようで知らない人だし、興味深い話がいっぱい聞けるわよ」
その提案にへらりと笑って同意する――感情の出処は違っても、彼にとってもあまり面白い状況ではなかったのは確かなようだ。
「お祭、楽しんでねー」
「気が緩んで呪いが掛けやすいから、でしょう……ノワール。知っている相手だからと気を許さないようにね。愛という呪詛、毒手は誰にでも使えて、大抵の人間は危険性を知らずにいるか、敢えて使うかのどちらかに分類されるのよ。未来からあなたと来た相手なら容易く呪えてしまうわ……」
「本気の母さんだわ! つまり『愛の祭』だからって告白とか受けちゃ駄目ってことよね!」
「聞き分けのいい子で助かるわ。それじゃあ準備をしましょう、ソニア……ピョンピョン☆うさぎさんだピョン☆だったかしら」
「ぴょーん!っと。いい調子よ、サーリャ。それにしても……純粋に楽しむだけならともかく『この仮装をして祭に参加すれば魔道の真理に近付ける』なーんて吹き込むのはどうかと思うんだけど、それを見て半笑いになっていた召喚師さんじゃないとしたら誰なのかしら……参加賞として祭器が貰えるのは確かなのだけど、槍だったし……誰か優しい人が声を掛けた方が良さそうな……」
ソニアの憂慮は多い――だが、それもまた彼女がひとときの安息を許されている証でもある。
そうしてふたり手を振り、ノワールと別れた。
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「……新しい母さんが特務機関にまた来るのね。頼もしいけれど……別の私に呪いを分担してほしいわ」
ただその想像は『呪い』で表出する鬼気迫る彼女と同様、本音でありながら寂寞の伴うものだ。
あらゆる可能性が存在するとしても、特務機関で過ごした『ノワール』は彼女ひとりだ。
まだ仲間たちが今ほど集まっていない頃。
見知らぬ英雄の中で、友人の親という以外はわからず逆に接し方のわからない英雄もいて、ウードとアズールとセレナによく似た異界の英雄が殊更に余所余所しくすることが、彼女自身にもよくわからないままに哀しかった。
夢を叶えたアズールや、何故か仮面を外さずマルスを名乗り続けるルキナといった
だが照り付ける夏の陽射しと、輝き押し寄せる波打ち際で楽しむのは空想、希望。
『本来のノワールとは少し違う可能性』としての召喚だ。
自分が複数いたら、『本来のノワール』がいたら、母親のように、他の英雄のように、強くその存在を主張しつつ共存、和解できるだろうか、という恐怖。
「あ、いたいたー! もう、ノワール。皆心配してたよ!」
「リズさん……」
どの『リズ』だろうと先程までの思考の延長で全体像を見遣る。
参加賞の花。
杖も花で彩られた祭器。
息子であるウードから贈られた花。
『愛の祭』の参加者としての『リズ』だ。
「えっ、何で泣いてるの!? ノワール、サーリャさんに涙が止まらない呪い掛けられちゃった!?」
「違うけれど、きっとそうなんだわ……」
問われてまた涙していることに気付くが、それこそ『ノワール』の本質に近い痛みだ。
過去を変えたとしても、父親の仇を追い、敢えて呪術は教えず戦うための『呪い』と弓だけを与え、そのまま戦場に消えた『彼女の母親であるサーリャ』は戻らない。
それでもサーリャと共に戦える喜びを享受し、別の幼い『ノワール』の誕生と成長を望む。
病弱なノワールをよく治療していた『ウードの母親のリズ』も『ブレディの母親のマリアベル』も決して戻ることはない。
英雄としてその記憶の幻影だけを持って現れたノワールにもなお残る、大きく暖かな『リズ』と面影は重なりつつも幼い、未来の息子と並べば兄妹にすら見える、しかし母親としての強さを持った『リズ』は、特務機関に呼ばれ戸惑うノワールとよく話した。
『冬祭』のリズは枕元によく贈物を置いた。それこそウードが召喚されるまで『実際に会って話をした方が楽しい』とウードによく似た異界の呪術師であるオーディンと、それに当然ルキナと言い聞かせた。
この『変化した過去の世界の両親』に対する見方、振る舞いは時間を遡った仲間の中でもそれぞれに違う。
どれもが正しい反応であり、優劣はない。
自分たちがいた『絶望の未来』を否定したいという決意すらも『ギムレー』に殉じ自らの名も捨てた追手とは相容れない。
だからこそ、特務機関は全てを受け入れる。
元の世界では決して相容れることのなかった英雄が共に未来を開く、その可能性を作り出す。
「……ちょっとだけ。ちょっと寂しくなっただけなんです。リズさんは、闘技大会……どうでした?」
「闘技大会? もう、聞いてよー! お兄ちゃんってば、ルフレさんとふたりがかりで強い弓撃ってきたんだよ、ひどい!」
いつもと然程変わらず憤慨するリズに、調子を取り戻し、柔らかく笑みを浮かべた。
「でもねでもね、チーム戦だからね、ルキナがお兄ちゃんとルフレさんを護ろうとしている間に、ウードが他の人をどかーん!して、格好良かったなあ。うんうん、ウードはやっぱり私の子だ! 偉い! その後あっさりやられちゃったけど!」
「ふふ。目に浮かぶようだわ」
見せ場のひとつでも作らないと、と焦り叫ぶ姿まで、今回の闘技大会の衣装のウードで想像できる。
やはり人は簡単に変わるが簡単には変われず、誰にも――自分自身にも譲れない経験はあるものだ。
「良かったあ、元気になってくれて。皆ノワールを怒らせちゃったって反省してたし、『春の収穫祭』の衣装似合ってたのにからかっちゃったから謝りたいって、探し回ってたんだよー」
「本当に。感謝を伝えるどころじゃなくなっちゃったわね……いいことがあったって報告して、しっかり感謝しないと」
頭飾りのうさぎの耳を触り『普通の女の子』をイメージし、それはやはり似合わないと苦笑する。
「『愛の祭』が終わっちゃうわ! ぴょんぴょん急いで行きましょう!」
「えっへへ、ノワールもきらーん!ってしてるね!」
「約束された感謝の結実、だもの!」
――全ての『父さん』と最愛の『母さん』へ、春と感謝を。
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今年の愛祭が覚醒だー!?ってリズとお安いウード君がいるんですが!!
多分風花か聖戦だろうし、去年のシャロちゃん的に覚醒来てもリズ&ウードは来ないだろうと思ってたらまさかの戦渦主役!
☆4と配布な所完全に解釈一致なんですが!! ただ愛祭のお約束的に導入がイベント時空幻じゃなかろうな!?とED見るまで情緒めっためたで何も手に付きませんでした。
なおフェーパス時々スタドリ補充フルオート、スコア7桁でちょうどいい数出たから卒業!の7位です。ドリンク200本以上消し飛びましたが推し主役回で1桁取ったので満足しました。
ウード君自分で気付くの偉いねえ。親子尊い……羽燃やすぞ的お気持ち投書しがち召喚師ですが感謝の投書しました。
全員引けたしウード君もちゃんと完凸出来たのでこれは確実に何か書かなくてはならない!愛祭子世代!と書こうとしていた所で春兎ヘンサーの固定バグ案件投下。
待って下さい、そもそも私は聖戦も推しているため総選挙セリスさまとクロムさんのためにオーブを全力で貯蓄しなければならないのですが!?
ヘンリーさん真っ先にソニサリャ応援に行くねえ……会話がとってもヘンサーしてないです??待って私が勝手に某さんの影響で固定バグ拗らせてるだけなんですが????
と完全に感情バグり散らかした所で、こくほこ合わせのWebオンリーがある、ということで折角だから書く口実にするか!と久し振りにSS筋を全開にしました。
ノンプロッター勢い任せの民が覚醒子世代の愛祭!でやった結果見事にノワちゃんのSSになりました。
別名ノワちゃんに迫真「ぴょーん!!」させたかったSS。
固定バグ脳で生産されていますがそこまで固定バグではない、かなあ?な塩梅です。
サーリャちゃん多すぎない?ネタのひろずノワちゃんSS、地味に2回目です。恒常来てほしいなあ
これを書きながら「やっべヘンリーさんから弓継承させなきゃ」したため後で泣きの貯め解放しました。残す用はいたけど愛祭の好調の帳尻合わせ来てたので全体的に収穫祭は爆死気味でしたが、そこから追加来てくれるヘンリーさん好きです。書けば出るんだ!
ふたりは故国そんな思い入れないからなー、でペレジア弓は持たせてないのにどうしてこうなったの……
リズウード母子に思い入れある召喚師、花リズに護り手持たせるかどうか真っ二つになると思うんですがどうでしょう?私は速攻で「そういうことだよね?」しました。