国には居場所がなかった。 必要とされているのは『王子』という国の歯車だけ。 父と側近たちの傀儡になるのが運命付けられていた。 だからアイトリスを訪れても何も言われなかった。 むしろ侵略が容易になるとすら捉えられていた。 「ダリオスよ。そろそろお前も良い年頃だ。婚姻などどうかな……そう、例えばアイトリスの姉姫などは」 ――だから。 「御冗談を、父上。アイトリスごときが相手では我がグストンの名に傷が付きます」 だから、この想いを誰にも悟られる訳にはいかなかった。 「ねえ、ダリオス。秘密の話よ。私、王位を継ぐことの重要さを本当はわかっているの。でもね、やっぱりシオンが王になるべきだと思うの……私がグ[…]