これもひとつのBloodlines?

「しかしお前が所帯を持つとは、と意外に思ったが、まさか渓の正体が元気とはな。そしてその手の話はとんとなし、と」
竜馬が鼻で笑って炭酸をジョッキで掲げる。
アルコールはご禁制だ。その類の規則を守るつもりはないが実物がないのでは仕方ない。
「武蔵先輩に託されたんだ。それにあいつに罪はない、放っておいたら早乙女の子としてリンチだったんだぞ」
「などと言いつつ渓を嫁にはやらんなどと時々喚いている。今アルコールがないのは救いだな?」
「ぐっ……10年も父親やってればそれらしくなるのは当然だろうが! お前たちだって当事者になればそうなる!」
顔を見合わせた。所帯を持つ。子を持つ。
隼人は副官の山崎の顔を思い浮かべた――そういった関係を持ったこともある。選ぶとしたら彼女だろうとまでは考えるが、ゲッターは戦いを求める。選ばれれば安息はない。それにその約束を交わすには時期を逸してしまった感がある。
「ハッ、ないな。弁慶なら想像がつかなかったにしても世話焼きで物好きの嫁さんが見つかったのか、くらいは思う。隼人もなくはない。だが俺はこうだぞ?」
カラリと笑い飛ばし冗談じゃない、と口元を歪めた。
「……と、竜馬はこう言っているがどう思う、隼人」
「そうだな……恐ろしく肝が座った押しかけ女房に既成事実を作られるんだ、こういうのに限って」
「あァ!?」
小魚をボリボリと齧り頷きあった。
竜馬にとっての空白の年月で年季を重ねた彼らは妙に実感をもって想像できてしまった。
「いや、鉄也が覚悟を決めてジュンと一緒になったのを見たらなあ」
「甲児の方は相変わらずにしても、時間の問題という所はある。アムロですらああだしな」
「くっそ、俺があの時のまんまだからってガキ扱いしやがって! だからって何だその根拠のない未来像は!」
「……聞くか? 鉄也とジュンの紆余曲折。ジュンがああじゃあいつもガキじゃいられなかったな」
「ついでに言えば需要が結構あるんだよなあ『こういう』奴に限って」
ニヤニヤと炭酸を注ごうとボトルを差し出した。
「他人のノロケなんてウンザリだ。それに俺に限って! そんな未来は! 絶対、ない! んな気を遣うヒマがあったら愛娘につく悪い虫の心配でもしてろ!」
「ぐっ、言ってくれるな……剴ならまあそのうちそういうこともあるだろうとは覚悟してたんだが……やっぱ女は運命の出会いみたいなもんに弱いのかねえ」
もうひとつのゲッターを操る3人に思いを馳せる。
弁慶の養女、渓。紅一点であり地上戦のライガーの担当だが、その胆力は他2人に劣らずむしろ少し強く育ちすぎたかと反省する程度には強気で、実質的なリーダーだ。
引き取った頃を思い返せば良く育ってくれたと言わざるを得ないが、義父としての悩みはどうやら最近恋をしているらしい、というもの。
「ゲッター線の導きって奴がそんな乙女のセンチメンタリズムで片付くかぁ?」
「號に悪気とその気がないのがいいのか悪いのか、父親としてはどうだ?」
「お前ら……お気持ち以前に倫理の問題だぞコレは」
ポセイドン担当の剴は昔から弁慶が目をかけてきた若者だ。父親もゲッターのメカニックで付き合いが古い。渓からすれば幼馴染にあたる。身体的な面は置いておくにしてもその方面に疎すぎた――元々は早乙女元気という少年として育てられたこともあるのか――渓に対し、そこそこに大人びていた彼は淡い気持ちを寄せていたが、渓は全く気付くことがなかった。
問題として、渓がその恋心を芽生えさせ寄せるに至ったドラゴン担当の號は、ゲッター線の力で目覚めた人造人間――だけならまだいいのだがそのベースの遺伝子が早乙女博士並びに早乙女ミチル、即ち渓からすれば実の父親と姉にあたる人間であることだ。
「あいつも随分人間らしくなったが、やっぱりどうかと思うんだよなあ……」
精神部分はミチルの影響が大きいのか第一とする行動原理は『渓を守ること』である。
それを全力で叫んでは渓の照れを含んだ否定を食らう流れはひとつの風物詩だ。
顔立ちが整っているのと、普段は寡黙な青年というギャップ性。そして言行一致、情緒面の成長は著しく柔らかく笑うようにもなりある程度の常識も身に付けた。そのあたりがどうにも渓の乙女心というものに刺さってしまったらしく。
「他の連中もゲッター乗りにしては大人しくていい子だとか、何なんだ俺たちを何だと思ってんだ!?」
「それについては否定できんがお前気苦労多いな」
「あいつらの場合渓が叱責すれば済むせいか殴り合いが発生しないからな」
ただしその鉄拳制裁が飛んだ場合剴についてはただで済まないのは合意の範囲である。
元々気の優しい剴と、周囲が味方の人間であり常識と良識の範囲で行動している限りはお転婆の範囲で済む渓と、少し意図が読めない部分はあるが普段は2人の言うことを聞く號の3人組は周囲ともよく馴染んでいる。
以前は同世代が少なく特に女友達がいないことを案じていたが、服を選んでもらったり自身も年下の面倒を見て心配はいらなくなった。
「だが愛でどうにかなるもんじゃないと思うんだこれに限っては!」
「……アルコールなくてもコレなのか。藪蛇だった」
「ついでに警告しておくぞ。ジュンの出産が迫ってるから、鉄也が今かなりピリピリしてる。恐ろしい父親と怖い旦那様のダブルパンチだ。下手に刺激するなよ?」
「…………やっぱそういうの、よくわかんねぇな。わからんなりに警戒だけしておけってことか」
また炭酸をジョッキで煽る。
この世界にも竜馬に惚れ込んだ女道場主がいるかもしれないが――それはまた、別の話だ。

 

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スパロボ30発売記念、ワンライ復活おめでとうございます!
『版権(参戦作品)』がお題の日。折角30PVでしっかりチェンゲ子世代がいて、直近で1クールしっかりゲッター線キメ続けたのでそのネタにしようと思いました!
今しか出来ないと思うのですよこのネタ! 時事ネタは風化するけどやっぱやらなきゃ損ですよね!
PVの会話とINFINITYとベルチルあるから多分こういう人間関係な気がするのですがどうなのでしょう?
ちなみに版権BGMありの状態でやりたいので体験版やっていません、チェンゲって地味に出しにくい世界観だからどうなってるんだろうね?ということで一応『30っぽい世界』ってことで
タイトルそのものは題は本文を表す、で直で出たのですがもうひとつの候補『これもひとつの運命の血統?』と悩みました。
Bloodlinesが一応曲名の前半部分で本題になるのと、こっちの方がネタ話っぽく見えるかな?くらいの感じです。
近親的な意味じゃないぞ一応私はチェンゲの彼らも子世代と呼んでるので! とはいえやっぱり引っかかるよね?という話です。

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