未練
ギリアムとヴィレッタの間には強い絆があり、男女としても愛しあっていた。
信頼から始まったヴィレッタの感情は明白に恋愛感情に変わっていった。
ギリアムは恋など知らなかったが、一際大切な存在が女であることと己に恋愛感情を持っていることを尊重した。
男女であるが遺伝子構造が根本的に違う彼らが新しい命を生むことはなく、寿命の差はどちらが先かの違いはあれど決定的と確信出来る。
そしてギリアムは己の意思とは関係なく記憶を保ったまま放浪する宿命にある。
その上で結ばれることに意味がある。
全て理解した上で拒んだ。
理解している。
ヴィレッタは全て理解した上で一線を越えることを望んでいる。
ギリアムも同じだ。
この世界と人々を愛し続けた以上、肉体関係を持つなどというのは些細なことだ。
それがなくても同じ。
死にたくない。死ぬのが怖い。生きていたい。
「俺は人になってしまった」
独り呟く。
死んでもいいと思っていた。
死にたいと何度も思った。
死は必然。
戦死ならまだしも、些細な病気や不意の事故で死を迎えることも当然ある。
常に他人の死を恐れている。
ただ、自分の死を恐れたことはなかった。
消滅は恐れても、命を落とすことは恐れていなかった。
彼らとはどこかでまた会える。
だが違う。それは彼らの姿と心を持つが違う存在だ。
だからこそ深い関係を忌避したが、愛すべき彼らと親しくなることを望み積極的に関わった。
彼らが己の死を悲しむことを酷く恐れるようになった。
次元を超えるというのは突拍子もない他人事だが、死は全てに訪れる。
どちらが悲しいかは比べるまでもない。
ヴィレッタを自室に呼び出しいつものように話した。
いつもより長かったが会話は楽しい。
「ヴィレッタ、話がある」
「どうしたの。改まって」
告げなくてはならない。
「1回だけでいい。抱かせてくれ。嫌なら構わない」
言ってしまった。
ヴィレッタは困惑しつつ赤面した。
「嫌どころかずっと望んでいたし、1回で済ませる気も当然ないけれど……理由を聞かせて」
「ひとつのお約束さ。死亡フラグという言葉があるだろう」
「知っているわ。あなたはフラグだらけね」
「有名なものに戦地に行く前にプロポーズし帰ったら答えを聞く、と告げるものがあるな」
「大抵そうはならない」
創作の物語を好む彼らはそういったお約束を笑っている。
「ああ。古典的すぎて逆に使われなくなってしまったものだ。だが時々あるだろう? 本当に帰ってきてハッピーエンド、というものが」
「つまりそういうのがやりたい、と。上司の影響かしら?」
「いや。未練があるということは死を恐れること、生きぬくための力だ。未練があるほど強くなれる。そして君と結ばれなかった、という未練を抱え続けるよりは結ばれることは出来たが別離した、という未練の方がいい。酷く強い未練は恐ろしい力を発揮してしまうからな」
「説得力しかないわね。ならもう1つ未練。私は初めてよ」
「緊張するがなるべく優しくする」
紅を向かい合わせ唇を柔らかく重ねる。
「ヴィレッタ、愛している」
「初めて聞いたわ」
「何度も言ったはずだが」
「初めてだらけということにしたいの。わかるでしょう?」
「そうだな。お互い幸せになろう」
「それは確実に初めてね」
「そのとおりだ」
挑戦的に微笑みあい、強く重ねた。
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好き放題やりまくったギリヴィレです。
ここまで関係重ねるのにどれだけ掛かるんだって話です。
そして確実にヴィレッタさんから一線を越えるだろうと思っています。
が、やっぱりギリアムから男らしくギリアムらしく越えて欲しいですよね!!
正直ギリアムって性欲自体はかなりある方だと思うので衝動的に越える方があると思うんですが、それは責任感がないので。
ちなみに基本的に私のヴィレッタは「そういう工作をやったことない」でギリアムは「工作では手段を選ばない」です。
そして本当に越えた一線は「お互い幸せになろう」です