■罪人たちの恋

「良かった、お前が死ななくて済んで。もう少しで俺、殺人者になるところだったぜ」
ヒューザのいつものぶっきらぼうな台詞。
いつもの、とわかるのは多分身体の持ち主の私と同じ名前のウェディの女性の記憶だ。
彼は紛れもなく幼馴染を事故とはいえ殺してしまった殺人者だ。
そして彼と話していてわかる。
彼は『彼女』を幼馴染以上の感情で見ていたこと。
彼女がヒューザをどう思っていたかはわからない。
現実を突きつけてやりたいが、もし彼女がヒューザを想っていたならそれをしたらどう思うだろう。
死にはしたが私の身体の中に魂の一部が残っている彼女。

「今まで言えなかったけどよ、俺はお前が……その、好きだ」
だから私はヒューザの告白に曖昧な返事を返した。
人間に戻れたとき、彼女と対話する機会が得られたので、思いきって聞いてみる。
「私もヒューザが好きなの。私の分まで幸せになって」
ああ、同じ身体を共有してただけあるなぁ。
そう、私もヒューザが好き。
だから、私はヒューザの告白を正面から受け止めた。
『気付くまで待つよ』と一言告げたが、彼が気付く日はくるのだろうか。

冥王との戦いで彼女の魂は消えた。
私は、ヒューザとの付き合いを続けている。
彼が愛した彼女を、演じて。
この恋が終わる頃には、ヒューザの罪も私の罪も告げる覚悟が出来るだろう。

 

フリーワンライのお題から『気付くまで待つよ』『終わりの前に』を採用。
初出2015年なのでVer2くらいに書いた奴だと思います。
自キャラウェディ子旅芸人なんですが(理由:ひんぬー&器用貧乏)うちのこではない仮想ウェディ子主人公です。
ヒューザ大好きですけど「モロに入っちまった!」は割とひどい導入だと思いましたw(でもそこも好き、というSSのつもり)

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