■純情な恋心と恋では済まされぬ執着
***Princia Side
私は、何であの人に惹かれてしまったのだろう。
あの人が欲しいのは私ではなく、私が王女であるこの国。
冷酷な人。犯罪組織の資金提供もしているという、下劣な男。
でも。
「サイバー卿、これを持って行って下さい」
「宝石……いや、規格外の品を使った民芸品ですな」
「我が国ではお守りとして親しまれています。これをあなたに差し上げようかと」
彼は表情を動かさない。
爬虫類――と言ったら獣人の方々に失礼だが――のような視線。
「私を守るのは私だけで十分だ」
「ええ、そうでしょうね。あなたが居なくなってくれた方が清々します」
「なら何故私にこれを?」
言えなかった。
このお守りは2つで1つ。1つは私が付けている。
そしてこの一組のお守りを付けている男女は、いつか幸せな結婚をする。恋愛成就のお守り。
「いつか、お話いたします」
「我儘なお姫様だ。だが、そこがまた魅力的でもある」
嘘ばっかり。私自身のことは、魅力的だなんて思ってないくせに。
――お守り、効いてくれるといいな。
何故惹かれてしまったのかはわからない。
これから裏取引に行くような彼を、心配するような謂れはない。
でも、無事にまた私の神経を逆撫でするような言葉を言いに来て欲しい。
そこに、少しでも彼の嘘の中に真実が含まれていたなら。
私は、それで幸福なのだ。
何故かはわからなくても、ようやく見付けた、愛しい人なのだから。
***Load Cyber Side
私は、何故あの小娘に惹かれてしまったのだろう。
私が欲しかったのは彼女ではなく、彼女が王女であるその国だったはずだ。
国王たちと違い、聡い彼女はそれを見抜いている。
しかし、彼女は私にお守りを渡した。
2人1組の恋愛成就のお守りだというのを、私は知っている。
彼女もどうやら私に惹かれているらしい。
それに気付いたことを悟らせぬよう、いつものように彼女を口説いた。
本当はもっと別の言葉を伝えたい。
『全てを投げ打ってでも、貴女を私の妻にしたい』
たとえ、その時の彼女が、王女でなかったとしても。
――たとえ、今の明るい笑顔が、失われてしまったとしても。
何故本気になってしまったのかはわからない。
だが、私は彼女を手に入れたい。
今回の裏取引で手に入れるのは、そういった薬や道具なども含まれる。
そして国を訪れ、彼女に会い、そしてその言葉を伝えよう。
私は、こういう方法しか知らないのだ。
そして後悔するのだろう。
従順に、私に傅く彼女は、きっと魅力的だ。
だが、それは最早、彼女ではないだろうから。
決心した今でも、彼女の強気な微笑が頭から離れなかった。
Twitterのワンライで書いたものの再録。お題は『お守り』でした。
フォロワーさんの語りにホイホイ釣られたクロスオーバー脳です。
GBAもAXもアニメもごた混ぜのF-ZERO新作ください