その愛は幻影か
状況を理解するのに、しばらく時間が掛かった。
近くには彼女の仲間はおらず、センサー類は現在地を感知できない。
ただ、R-GUNは呼び出す事が出来るし、不自然な程に無傷だ。
意識を失う前は、機体の損傷も弾薬の消耗もあったはずだが、それが全く無くなっている。
有機的にも無機質にも見える壁に囲まれた空間はどこか禍々しさ、そして何故か迷いを感じた。
しかしこの空間には扉というものが見当たらず、強いていうなら六芒星を描いた魔法陣があるくらい。
意を決して、R-GUNに乗ったまま魔法陣に踏み入れる。
似たような空間だったが、広く、そして人がいるという相違点があった。
「よく来たな……ヴィレッタ・プリスケン」
「アポロン……お前が私を招いたのか。仲間は……それにギリアムはどうなった」
構えた銃を光らせて問う。
意識を失う前、彼女は仲間たちと共に敵の部隊長と対峙していた。そこに現れたのがギリアム――彼もまた彼女の仲間であり、それ以上の存在だった。そのはずだった。
「ギリアムはお前たちをバラバラに転移させた。だがその甘さを恥じていたよ……だが思うのだ。お前たちのような存在は新世界に必要だと」
「私が、いや、私たちがお前に従うという選択はない」
言葉と共に放った銃弾はアポロンに届く前に消え失せる――文字通り、次元の壁がそこにあった。
「……コール・XNガイスト」
R-GUNは、レジスタンスの中でも強力な機体だ。
他のメンバーがいたなら結果は別になっていたかもしれない。
しかし彼女一人ではその決戦兵器相手にはあまりにも無力で、R-GUNは機能停止に追い込まれ生身で投げ出される。
「ヴィレッタ……もう一度問う」
覗き込むのは敵の総大将であるアポロン。
「何度言われても答えは同じ。アポロン、お前に従うことはない」
霞む目で仮面を睨む。
血だけでなく涙も溢れてくる。
このまま全ての命を流し尽くして、果てるのだろう。
あとは仲間に任せるしかない――イングラムの遺言を思い出して、何だか皮肉だなと笑う気にはなったが表情には出ない。
「でもね、ギリアム……」
子供のぬいぐるみを探しに行っていつまでも帰らない彼に業を煮やし、心底心配した。
彼が唐突に現れ転移させられた時は、豹変に驚きもした。
しかし彼女の目には何も変わっていない、ただ、泣きそうな顔のギリアムが映っていた。
「……ずっと、愛していて」
握られたその手の温かさを、もう感じることが出来ない。
「約束するよ、ヴィレッタ。愛している……ずっと、愛し続ける」
愛する人の面影を最期に、彼女の視界は永遠に閉ざされた。
死にネタごめんなさい!そしてとうとうやらかしましたアポロンVSヴィレッタ!
診断メーカー「貴方が好きな人に伝えた最期の言葉」である日出た
『ヴィレッタは見つめながら好きな人に最期の言葉を送りました。ずっと愛していて、と。』
にぶわああああと萌え上がり、やっぱ寿命の違いでヴィレッタさんが早く逝くのかなぁ、ギリアムさんは「ああ、約束する」とか言うのかなぁと思ってたら
「アポロンに向かって言う」という電波が来てしまって書き上げてしまったという……
まあ私のギリヴィレはいつかアポロンになって悲恋になっちゃうんだね、って妄想からスタートしているのでずっと抱え続けた妄想だと言えばそうなんですけれども。