■アイドルの道は

暗転の後、スポットライトが幸子に降り注ぐ。
「ふふーん、カワイイ天使のボクが舞い降りてきてあげましたよ!」
続いて点いたライトは光を照らした。
「皆が多いな……いや、大丈夫か。アタシと幸子でヒロイックエンジェルだからな!」
『かわいいー!』
「ふふっ、もっと讃えてください! 拝んでください!」
『飛んでるからちっちゃくないなー!』
「ちっちゃくない! 140cmはある!」
「ふふん、カワイイボクは142cmくらいでちょうどいいんですよ」
「ぐっ、ここぞとばかりに自慢された気がするぞ!?」
「ヒーローがそんなこと気にしてどうするんですか。ボクのように自信を持ってください! さあ、曲入りますよ!」
ワイヤーアクションを交えた動きの多い曲。
舞台脇で見ているプロデューサーは気が気でならない。
リハーサルの時、光は普段から鍛えていることとこういったアクションに憧れがあることから積極的だった。
一方幸子は天使として降臨するというコンセプトは気に入ってくれたが、以前にスカイダイビングをさせられたこともあり高い所が若干苦手で定期的にご褒美――カワイイ、天使、と褒めちぎる――をあげなければならなかった。
ワイヤーで歌うのは1曲だけとはいえ、幸子の負担は重い――後で思い切り褒めねば。
曲が終わり、2人がステージに立つ。
「天使とヒーローの競演、どうだった、皆! 星すら守れそうだろ!」
「ボクのカワイさは世界を救うのですよ! ボクが『カワイイ』の極地であるが故に光は『カッコよさ』が目立ったでしょう! さあ、ボクほどではないですが頑張った光に声援を!」
『光、カッコよかったぞー!』
『幸子、天使ー!』
「ありがとう! 次の曲の後は皆驚きのあのユニットだ! でも! アタシたちの歌もちゃんと聞いてくれよな!」

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プロデューサーがお疲れ、と声を掛けると幸子はドヤァ、という擬音のしそうな笑みを浮かべ隣の光もニッカリ笑っている。
「プロデューサーさん、やり遂げましたよ! さあ、ステージ上の天使なボクをいくらでも讃えていいんですよ!」
「お疲れ様だ、幸子、相棒! 今も心の中で伴奏が鳴り響いている! これが『ロック』の魂なのか!?」
「今日歌ったのはポップスですよ」
声をかけつつジュースを手渡す。
「だけど思うんだ。きっとこうやって歌が心の中に降り積もっていって、アタシだけの輝きになる。その輝きがアイドルとしての輝きなんだ!」
「ふむふむ。最初からボクは世界一可愛くて世界一輝いているのでわからないですねぇ。でも興味深い考え方ですよ。ボクも一段とカワイくなるために努力はしています」
「アタシもヒーローアイドルとして特訓している! そしてアイドルの道っていうのは、未来へと鳴り続ける終わらない曲なんじゃないかって」
「ならボクのその曲はボクのカワイさを讃える讃美歌ですね! 光は勿論ヒーローソングでしょう?」
「ああ、そうだ!」
そして2人の視線がプロデューサーに注がれる。
今日のステージへの感想を求めているのだろう。
――さて、最初は『ヒロイックエンジェル』単位で褒めるとして、個別のコメントは幸子にすべきか。後回しにされた時の反応が見てみたい気もするが――

 

Twitterワンライ企画、お題が『終わらない曲』だったので曲とか歌とかいえばデレマスだろう!と書いてみました。
ヒーローヴァーサスとイグZERO推しですが基本南条光絡みなら何でもおいしくいただけますもぐもぐ。
何か南条PのSSのくせに幸子の描写のほうが力入っている気がしないでもない……w

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