最後の出撃

ゲシュペンストRV。
ギリアムにとって始まりの地であった世界にも、極めて近く限りなく遠いあの世界にも存在しなかった機体。
量産型を発展させたMk-II改と違い、ギリアムの専用機体としてPTX-001を徹底的に改造したものだ。
――龍虎王のように機体と会話することが出来たら、彼(または彼女)は何を話すのだろう。
そんな思考実験をしてしまう。
普段ならありえないことと一蹴するが、ギリアムの“ゲシュペンスト”に対する思い入れが、その思考をむしろ面白いものと感じさせる。
「君はこんな姿にされて恨み事も言いたいかもしれないな」
元の曲線的なフォルムとは打って変わって直線で構成されたシルエットは、どことなく禍々しさを感じさせる。
ただ、そう感じるのは設計した彼自身だけかもしれない、とも思う。
設計している間にXNガイストのことが頭によぎり続けた。
武装については無論“エルピス”のゲシュペンストを参考にした。
あの世界への未練が、頼もしい愛機を“亡霊”に変えてしまっているのではないか、と。
「だがその未練と共に因果を断ち切ってみせる……だから力を貸してくれ、ゲシュペンスト」
ギリアムは予知能力はあるが念動力者ではない。
そしてRVに意思を宿すような機能はない。これは、ただの兵器だ。

ネビーイームへの突入部隊の最終確認。
待ち受けるのは、シャドウミラーとの決戦。
そして、ギリアムの過去の精算。

「君はこの世界に遺さざるを得ないな」
簡単な遺書のようなものはコックピットとヒリュウで割り振られた自室に置いてある。
遺書のようなもの、というのは間違いに近いが。遺書、と断言した方が本質に近い。
因果地平の彼方は流石に彼も行ったことがないが、この世界においては死んだも同然であろう。
「俺用にカスタムしすぎた機体だ。乗り手がいるといいが」
何人かの顔がよぎった。
ゼンガー、エルザム。彼らは専用機を手に入れたしギリアムのようにゲシュペンストに縛られてはいない。
カイ少佐。彼はゲシュペンストに拘り続けているが、RVは彼が目指す方向とは真逆だ。

そして――

「……何で彼女の顔が浮かぶのだろうな」
彼女も何度かゲシュペンストの系譜に乗ることがあったが、それはR-GUNなどの代替としてだ。
マイとの席争いがあるとはいえ、SRXチームの隊長である彼女の顔が、何故浮かぶのか。
だが思ってしまった。
自分が消えた後、RVに乗るのが彼女であってほしい、と。
未練ばかりじゃないか、と自嘲して出撃準備を進める。

「これが俺とお前で行く最後の戦いだ」
語りかける。返答は、勿論ない。
「俺は、亡霊に呪われて幸せだよ」

出撃口が開き、カタパルトの順番を待つ。
心残りはある。ありすぎる。
皆に別れの挨拶が出来ないのが、ガーネットたちの子供と会えないのが残念だ。
同じ異邦人のラウルたちの今後が心配だ。
キョウスケとエクセレンの式はエクセレンが真っ赤になりそうな映像を用意出来そうだったのだが。
そして、この世界で生きていけばいずれは自分も彼女と――――

「ゴースト2、ギリアム・イェーガー!」
感傷を隠し、カタパルトの所定位置につく。所詮罪人だ。その望みは贅沢すぎる。
「ゲシュペンスト・タイプRV、出撃する!」
だから、この世界のために、仲間たちのために、出来ることをするだけだ。

 

スパロボワンライ。お題は『出撃』
ロボ祭も兼ねているということなのでRVにも焦点を当てた……つもりなのですがいつもの湿っぽいギリヴィレでした。
まあギリヴィレは私のデフォルトなのでw

 

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