夕暮れと夜明けを共に過ごして

アユルは夕暮れ時が好きだという。
青かった空が赤く染まり、そしてだんだん紺の星空になるのがいい、と。
2人でゆっくり眺めた。
「そうだな、お前の言うとおり美しい。生きるのに必死で……ゆっくり空を眺めたこともなかったな」
「はい。それでお願いがあるのです」
「何だ?」
「私に『夜明け』を教えてください」
朝に弱いのとセキュリティの関係で外に出られないのとで、夜明けの空を眺めたことがないのだという。
「仕方のない奴だ。起こせばいいんだな?」
「お願いします」
「ならば今日は早めに就寝するといい。気持ちよく起きれるだろう」

目覚ましのアラームを設定しながら思案する。
常人なら見過ごしてしまうようなことまでアユルは感動する。
それは彼女の出自の特異さ故だろうが、だからこそ色々なことを教えてやらねば、と。
使命感だけでなく、目を輝かせるアユルの表情が眩しいから。

アラームの通りにジンは目を覚ます。
アユルの眠る部屋をノックする。
「どうぞ」
返答があった。
「おはようございます。私も目覚ましをかけてみたんです」
「羽織る物は……持っていないのか。俺のコートを貸してやる」
変わりゆく空の色。黎明を告げる鳥の声。
「世界は毎日生まれ変わっているのですね」
空を眺める余裕はなかった。微笑むアユルの横顔だけを見ていた。
次は。
次の夜明けは、空を眺めよう。

 

Twitterのお題箱より『ジンとアユルで『夜明け』』で書いてみました!
まだまだくっつく前のジンアユですw
ジンアユは公式最大手ですが個人的に書きやすい傾向で嬉しいです

 

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