死亡フラグをへし折れなかった場合

ラジアントヒストリア、絶賛プレイ中。
物語や音楽もさることながら、アトラスさんのバランス調整は流石だと思う。
で、プレイ中だけど妄想してみたことをSSとして書き連ねてみる。
異伝の第一章くらいのパラレル(特に想定はしていません)のストックの話。
バッドエンド大好きだぜひゃっふー。

タイトル:『パラレルのその先で』



木々がざわめく。
先程まで鳴り響いていた金属と金属、更に言うならば武具と武具のぶつかり合う音は鳴りを潜め、代わりに濃厚な“死”の気配が漂い始める。
血溜まりの中に転がる人、人、人。
その中に立ち尽くすストックの赤い服は、返り血で重く浅黒く染まっていた。
息を切らせる。補給も援軍も見込めない戦いを、どれだけ重ねただろうか。
武具についた血を拭って振り返る。
ついてきた兵士がまた死んだ。この死の場の中で生きているのはストックだけだ。
別働隊として動いているロッシュは無事だろうか?
深い傷を負ったレイニーと彼女の介抱を任せたマルコ、だいぶ前に置いてきた彼らは?
「……考えても仕方が無いか」
自分に出来ることは少しでも彼らに敵を向かわせないこと、そしてどうにか生き延びる道を拓くことだ。
ここでどうこうしている間に、グランオルグとアリステルの本軍同士が戦い、戦争が泥沼に陥っていくのはわかっている。
その間に世界が急激に砂に変わっていくことも。
――――どこかで、間違えたのだ。重大な決断を。
隠していた『白示録』がにわかに輝く。
【聞こえますか、ストック】
「……お前たちか」
【もう気付いていると思うけど、君は間違った。戦いばかりが戦況を切り抜ける手段ではない。もっと考えるべきだったね】
『ヒストリア』の双子の管理人の片割れ、ティオが辛辣な言葉を連ねる。
しかしストックには返す言葉もない。その選択をしたのは、紛れもなく自分だったのだから。
【さあ、白示録を開いて】
【あるべき世界に戻り、別の歴史を作っていくんだ】
ストックは俯く。歯を食いしばり、柄を握る手を震わせる。
【どうしましたか、ストック?】
双子の姉、リプティが尋ねる。しかしその答えを彼女は既に知っていた。
それでも問わずにはいられないのだ。深い悲しみをその瞳に湛えながら。
「俺の選択がこの泥沼の戦いを呼んだ……だが、その愚かな選択についてきたあいつらを、見捨てろというのか」
【君が歴史をやり直せば、彼らはそんな戦いに行かなくていいんだ】
そう、それがそもそものストックが白示録を使う理由だ。
しかし己の選択を間違えたからといって、彼らの選択を否定することなど出来はしない。
「俺は……もう少し戦う。この森に残った敵は、そうそう多くない、そして……」
ストック自身も未来に展望を持てないでいたが、責任感だけが彼を動かしていた。
たとえ世界が砂に溢れても、その選択に責任を持ちたかった。
『白示録』
あまりにも簡単に歴史を変えてしまえるこの神の書物を持ったストックの、超えてはならない一線だった。

「いたぞ、あっちだ!」
放たれる矢。剣を抜き、槍を構える兵士たち。
士気を込む彼我戦力差が違いすぎる。
しかしストックは血糊を拭いたばかりの剣を構え、敵陣に突入していった。


ストックが目覚めたのは、暗いのか明るいのかわからない空間に奇妙に動く階段がある世界――ヒストリアだった。
【戻ってきたね、ストック】
【滅びの歴史でも自分の選択に責任を取りたい。わかります。でも、あなたには別の方法を取っていただかなくてはなりません】
「…………」
【君の時間は戻せない。君は何歳まで戦うつもりだ? 僕たちが呼んだら素直にヒストリアへ来てほしいね】
「……次からは、そうさせてもらう」


料理を作るレイニーの背を見て、一息ついた。
今日の野営は肉の面での収穫が多く、栄養満点だった。
「ところでストック、ここ最近で老けこんだんじゃない? 最初から19歳には見えなかったけどさ」
「心労が多いんだよ。レイニーのこととかさ」
「五月蝿いよ、マル! 人のことが言えるの?」
「ハハッ、俺もよく言われるぞ。貫禄が出ていいじゃないか」

――――大丈夫だ、お前たちは俺が生かす。
こんな他愛のない食事会が、普通に出来るように――――

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